米スタンフォード大学などの研究チームは、コバルトやニッケルなどのレアメタル(希少金属)を使用せずに、高性能なリチウムイオン電池を開発できる技術を実証した。電池の正極材料にリチウム・鉄・アンチモンを使用し、高電圧で作動させることに成功した。リン酸鉄を使うリチウムイオン電池も実用化されているが、電圧が低いという問題があった。研究チームは多くのエネルギーを蓄えられる電池の実現を見込む。

米スタンフォード大、京都大学、米オークリッジ国立研究所、米SLAC国立加速器研究所、米国立標準技術研究所の共同研究成果で、15日付の英科学誌「ネイチャー・マテリアルズ」に論文が掲載された。

新たな鉄系正極は高い価数の鉄イオンを使って充放電する=京都大学提供

中国の電気自動車(EV)などでは、リチウムイオン電池の正極に安価なリン酸鉄リチウムを使うリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池が増えている。しかし一般的なリチウムイオン電池が動作する電圧と比べて低く、質量や体積あたりに蓄えられるエネルギーの指標「エネルギー密度」が低いという問題があった。

研究グループは鉄とアンチモンという元素を含む酸化物材料の結晶構造に着目した。この酸化物材料の電子の数が従来と異なる酸化鉄の酸化還元反応を活用し、リチウムイオンを出し入れできることを実証した。動作電圧は4.2ボルトと、従来のリン酸鉄リチウム(2.8〜3.5ボルト)より大幅に高い結果となり、充放電に向くことが分かった。

電極自体の重量が重くなるため、ニッケル・マンガン・コバルトなどを使う電極よりもエネルギー密度は低い。研究グループは今回発見した結晶構造を軸に、軽くてより低コストな正極材料を探す。

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