名古屋市立大病院(名古屋市瑞穂区)の敷地内で進められている「救急・災害医療センター」の新設工事を巡り、現場地中から大量の障害物が見つかったことに伴う増額工事費の支払いに名市大が応じないなどとして、施工を受注した共同企業体(JV)が解決を求めて愛知県建設工事紛争審査会に申し立てる方針を固めた。関係者への取材で判明した。
工事を受注したのは大手ゼネコン「清水建設」(東京都)などで作るJVで、2025年3月の工事完了を目指し、22年10月に着工した。
関係者によると、23年2月に工事現場の地中から、過去の建物の基礎部分や杭(くい)などとみられる障害物が見つかった。一部は、約25年前に市が発注した既存建物撤去工事の現場から発見されたという。障害物の撤去などに時間がかかり、撤去費用や人件費などで工事費は増大。工期も9カ月延長する見通しとなった。
これに伴い、JV側は契約内容に増額工事費を反映させるよう変更を求めたが、名市大と合意に至っていないという。
毎日新聞が入手した名市大とJV間で交わされた文書によると、約25年前の工事を受注したJVの中に、清水建設など今回の工事のJV構成企業が含まれていた。そのため、名市大は「本来(当時の工事で)撤去されてなければならないもの。企業体に責任があり、負担を求める」と主張している。
清水建設は毎日新聞の取材に対し、「障害物は契約時の図面に記載のないエリアから見つかっていて、そのせいでここまで工期が延びている」と強調。その上で、過去の工事現場から見つかった一部障害物についても「当時の工事とはJVの構成員も発注者も異なる。今のJVの責任という主張はおかしい」と反論する。
一方、名市大の山口啓一施設企画局長は取材に対し、「清水建設側から『過去の工事エリアから見つかった障害物が工期延長の主な要因』との説明を受けた」と語る。
その上で、「過去も現在も、工事を担うJVの代表は清水建設であるため、責任があると考えている。弁護士と相談し、根拠を持って主張している。公金が使われているので、安易な妥協はできない」と強調した。
名市大が建設を進める救急・災害医療センターは、救急搬送の対応強化や、南海トラフ地震など大規模災害に備えるために計画。地下1階、地上8階建て、延べ床面積は約2万7600平方メートル。病床数は118床を予定。
契約当初の工事費は149億2700万円で、約85%を名古屋市が補助する。市担当者も「なるべく早く解決してほしい。払わなくても良いお金は払えないので、白黒付けてほしい」と話している。【川瀬慎一朗】
建設工事紛争審査会
建設工事の請負契約に関する紛争解決のため、専門知識を有する委員らが公正中立な立場から、あっせん、調停、仲裁に導く公的機関。国土交通省と各都道府県に設置され、愛知県では2024年度5件申請された。
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