日本で金山の採掘を目指す外資系企業が今年、北海道東部に位置する鴻之舞金山跡の周辺エリアでの試掘で、金が高密度に含まれる鉱物を見つけた。コストに見合う金を採掘できると企業が判断した場合、金山跡で再開発が進む可能性がある。一方、後志地方にある金山跡では、別の外資が進めていたプロジェクトを中止したことが明らかになり、環境への悪影響を懸念していた住民らは胸をなでおろした。
道東で金山跡の再開発を目指しているのは、いずれもカナダに本社があるジャパン・ゴールド社とアービング・リソース社。
ジャパン社のホームページなどによると、今春、紋別市、遠軽町、湧別町にまたがる「白竜プロジェクト」で試掘を開始。金の含有量(品位)が1トンあたり24・1グラムと非常に高い品位の鉱物を見つけた。3グラム程度で開発が行われる海外の金山だけでなく、日本で唯一商業規模で採掘が行われ、世界でも屈指の品質を誇る鹿児島県の菱刈鉱山の平均品位(20グラム程度)も上回る。
同プロジェクトのエリアには、日本で過去2番目に産金量の多かった鴻之舞金山跡が含まれる。同社のジョン・プルーストCEOは「良い結果に勇気づけられている。歴史的にとても恵まれていた鴻之舞金山跡での調査で、最初の重要なステップになった」とコメントしている。
同社は4本の穴を最大700メートル掘る計画だったが、3本で最大568メートル掘った後、埋め戻したと説明。「完全に元の状態に戻した」としている。
同社はこのほか、優先事業に掲げる石川県の「富来プロジェクト」と九州南部の「えびのプロジェクト」などで試掘を進めていると明らかにしている。
アービング社も5月、雄武町でのプロジェクトで、平均品位1・14グラム、最大7・19グラムの鉱石を試掘したとの結果を発表した。
一方、黒松内町と長万部町にまたがる静狩金山跡で試掘を目指していたオーストラリア系のジャペックス社は9月、鉱業(試掘)権を放棄した。同社は昨年7月に黒松内町で住民説明会を開いて以降、約束していた2回目の説明会を開いていない。環境への影響を懸念する住民らの強い反発を受け、事業を断念したとみられる。
黒松内町は「一安心だが、今後こうした事案を発生させないため、このエリアの森や川、海の健全性を保ち、価値を向上させ、アピールしていくことが特に重要」とコメント。反対運動を主導した同町の畜産業、森塚千絵さん(61)は「まずは良かったが、会社が姿を変えてやってくるかもしれない。金が本当に必要なのかを検討し、外資、日系に関わらず掘ってはいけないという方向に議論が進んでほしい」と求めた。
金山採掘への期待を示していた長万部町の木幡正志町長は取材に「(事業断念について)説明がなかったことは残念」と話した。【片野裕之】
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