米東部ペンシルベニア州の原子力発電所(2024年)

【ヒューストン=大平祐嗣】米原子力発電大手ウエスチングハウス(WH)は28日、米政府とWHの株主企業2社で戦略提携を結んだと発表した。WHの技術を使い全米で800億ドル(約12兆円)分の新たな原子力発電所を建設する。日米両政府が発表した投資枠組みを使うとみられる。人工知能(AI)による電力需要増に対応する狙い。

発表では提携により建てる原発の立地や基数、建設時期、資金の出元などの詳細は明らかにしていない。28日に日米両政府は、WHによる原発の建設などに最大1000億ドルを拠出すると発表した。欧米メディアはこの資金が原資になると指摘している。

WHの株主でカナダのウラン採掘大手カメコ、同じく株主でカナダの投資会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントと米政府が提携した。

ラトニック米商務長官は「米国を原子力ルネサンスの最前線に押し上げるという大統領のビジョンを体現する」とコメントした。

提携は5月のトランプ米大統領による大統領令に基づいて結ばれた。大統領令では原発の発電出力を現在の4倍に拡大する目標や原発新設の審査機関の短縮を掲げていた。

原子力新設の背景にはAI普及によるデータセンターでの電力需要増がある。米ローレンス・バークレー国立研究所は、データセンターの電力消費量は2023年の176テラ(テラは1兆)ワット時から28年には3倍に増えると予測する。

米国の電源構成に占める原発の比率は2割程度で、過去20年以上大きな変動がなかったものの、データセンターの急増で新たに原発が再注目されている。

WHは東芝の元子会社で、米国の原発建設のコスト増などで経営破綻した。その後、ブルックフィールドとカメコが株式を取得していた。

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