
JR西日本は29日、利用者の少ないローカル線の2022〜24年度平均の営業収支を発表した。収支を公表する1キロメートルあたりの1日平均乗客数(輸送密度)が2000人未満の19路線32区間は、すべて赤字だった。赤字額は計267億円。前年に公表した21〜23年度平均の営業収支(17路線30区間)と比べ、赤字は約34億円増えた。
JR西は新型コロナウイルスの感染拡大の収束もあり、利用状況に「一定の回復はみられる」とする一方、人件費や設備の修繕・保守費用などが膨らみ「トータルでは赤字が増えた」と説明する。前年に21〜23年度平均を公表した30区間同士で損益を比較すると、赤字幅は約10億円拡大した。
JR西は22〜24年度平均から、赤穂線の播州赤穂ー長船間と、呉線の三原ー広間の2路線2区間の収支を公表対象に加えた。JR西のローカル線で最も収支が厳しいのは、広島・岡山両県の山間部を結ぶ芸備線の東城―備後落合間で、100円の運輸収入を得るために9945円の経費(営業係数)がかかった。前年の1万1766円と比べると若干改善したものの、収益確保が厳しい状況が続く。
JR西の在来線3959キロメートルのうち、輸送密度2000人を下回る区間は4割弱を占める。JR西は「鉄道の大量輸送の特性を発揮できていない」として沿線自治体に鉄道のあり方を巡る議論を呼びかける。芸備線は24年から国が設置する「再構築協議会」で自治体と協議中だ。25年度は誘客イベントなどの実証実験を実施し、利用促進効果を検証している。
23年の豪雨被災で運休中の山口県のJR美祢線は、バス高速輸送システム(BRT)方式での復旧に向け、沿線自治体と協議に入った。地方の人口減少が続くなか、JR西は地域に最適な公共交通システムを自治体と一緒に考えたいとしているが、自治体側には鉄道廃線への警戒感が根強い。
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