
【ヒューストン=大平祐嗣】米国石油メジャーのエクソンモービルとシェブロンが31日発表した2025年7〜9月期の純利益は両社とも前年同期から減益となった。原油価格の低迷が響いた。原油生産量は増やし過去最高とした。両社は優良鉱区の獲得と人員削減を進め、低価格でも増産する。長期的に化石燃料の需要が続くとみて市場で地位強化を狙う。
油価低迷でも増産
エクソンモービルが発表した25年7〜9月期の純利益は、前年同期比で12%減の75億4800万ドル(約1兆1600億円)だった。シェブロンの25年7〜9月期の純利益は、21%減の35億3900万ドルだった。原油価格の下落で精製マージンなどが低下した。
米原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物の価格は25年7〜9月の終値の平均が1バレルおよそ65ドルだった。前年同期から14%安い水準だった。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」の有志国が増産した。

油価が低迷する中でも両社は生産量を増やした。エクソンの石油ガス生産量は日量476万バレル(石油換算)、シェブロンは408万バレルでそれぞれ四半期ベースで過去最大となった。エクソンは南米ガイアナの海底油田と米南部テキサス州のパーミアン盆地で生産量を増やした。
2050年、天然ガス需要は2割増
背景には石油ガスの需要が継続するとの思惑がある。エクソンは8月末に発表したエネルギー長期見通しで、50年の石油需要が24年の日量約1億バレルから微増するとの見方を示した。天然ガスの需要は二酸化炭素(CO2)排出量がより多い石炭火力発電からガス火力への転換が進み足元から2割増えるとした。
エクソンのウッズ最高経営責任者(CEO)は31日の決算説明会で「(石油ガスの)枯渇という現実を人々は忘れがちだ。新たな資源への投資と発見を継続しなければ供給量は急速に減る」と話した。
買収と人員削減で競争力向上
油価低迷が進むなか、両社は買収や人員削減で競争力を高めている。
シェブロンは7月に530億ドルで米ヘスの買収を完了しガイアナの権益に参画し長期成長への道筋をつけた。26年までに社員の15〜20%の削減も進めている。エクソンは24年に595億ドルで米同業を買収した。欧州やカナダでは、約2000人の人員削減を進める方針だ。
米CNBCの番組でシェブロンのワースCEOは「原油価格が50ドルでも配当を維持できる」と述べたほか、エクソンのウッズCEOも米CNBCの番組で「1バレル35ドルでも利益を生み出していく」と話した。
米エネルギー産業全体では2社ほどコスト削減が進んでいない。米ダラス連邦準備銀行の3月の調査ではパーミアン盆地での原油の新規開発の平均的な損益分岐点は1バレル65ドル前後だった。
同行が9月に発表した139社への調査では、石油ガス業界の事業活動指数が2四半期連続のマイナスだった。同調査への経営幹部による匿名のコメントでは「油価が下がり関税で資材が高騰し、掘削活動は減る。石油産業は従業員を失う」などと事業環境の悪化への指摘が相次いでいた。
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