フリーランスを不当な取引から守る「フリーランス法」が施行されて11月1日で1年となる。取引の適正化と就業環境の整備が主な目的とされるが、具体的にどのような内容なのか。
個人で仕事を請け負うフリーランスは、企業と雇用関係にある労働者と異なり、労働基準法などの保護を原則として受けられない。発注者に比べて相対的に弱くなりやすいフリーランスが不利な条件をのまされないように、取引の適正化を図ろうと制定されたのがフリーランス法だ。
- 発注者から「法を守る」と言って欲しい 施行1年、フリーランスの今
取引条件の明示義務が「柱」
業務の発注者は発注の際、業務内容、報酬額、支払期日といった取引の条件を受注者であるフリーランスに対し、書面やメール、SNSの文面で明示することが義務付けられた。取引条件の明示は、その後のトラブルを防止することにもつながる同法の柱の一つとされる。
報酬の支払期日は、原則として成果物を受け取る日から「60日以内のできるだけ早い日」に設定することが義務づけられている。だが、期日を明示していない場合は、成果物を受け取るなどした日までに報酬を支払う必要があり、対応できずに「遅延」となる事例も多い。
「七つの禁止行為」も
公正取引委員会は6月、雑誌ライターや写真家らに取引条件を明示せず、報酬を期日内に支払わなかったとして、出版大手の小学館と光文社にフリーランス法違反では初となる勧告を出した。違反行為を受けたと認定されたライターらは小学館で191人、光文社で31人にのぼった。
また同法は、1カ月以上の業務委託をした発注者に対し、①受領拒否②報酬の減額③返品④買いたたき⑤購入・利用強制⑥不当な経済上の利益の提供要請⑦不当な給付内容の変更・やり直しを「七つの禁止行為」と定めた。
6月に大手楽器店の島村楽器が勧告を受けたケースでは、ピアノやギターの無料体験レッスンで、フリーランスに無償で講師役をさせていたことが⑥に該当すると判断された。
公取委は9月にもカメラマンや音声スタッフに取引条件を明示しなかったなどとして、テレビ番組制作会社「九州東通」の同法違反を認定して4件目となる勧告を出した。
さらに同法では、育児や介護と仕事の両立などを可能にする環境の整備も規定された。
育児への配慮、ハラスメントの防止も
委託が6カ月以上となる場合、発注者はフリーランスに対し、取引条件だけでなく、妊娠・出産・育児・介護との両立への配慮が求められるようになったほか、ハラスメントの防止、契約解除時の予告・理由開示の義務も課された。家庭や健康上の事情を理由とした不当な扱いを防ぐ狙いがあるという。
厚生労働省は、フリーランスが契約や報酬などでトラブルに直面した際に、無料で弁護士に相談できる窓口「フリーランス・トラブル110番」を弁護士会に委託して設置。相談件数は25年4~9月で6532件に上った。
相談内容は「報酬の支払い」が29.1%と最も多く、全額が不払いになっているというもののほか、一方的な減額や支払いの遅延などもあった。次に多かったのは「契約条件の明示」に関するもので、18.3%。書面などの不交付のほか、条件や内容が不明確といった相談があったという。
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