日産自動車のグローバル本社(横浜市西区)

日産自動車が売却を検討している横浜市の本社を巡り、売却先として米投資ファンドKKRが有力候補になっていることが21日、わかった。売却規模は1000億円弱になる見込み。日産は業績不振に陥っており、資産売却によって今後の設備投資などをまかなうことを狙う。日産経営陣の一部は本社売却に慎重な姿勢を示しており、KKRへの売却が実現しない可能性もある。

関係者によると、日産は既に本社売却に向けた入札を実施した。KKR系の企業が最高額で応札したとみられ、有力な売却先になっているという。年内にも売却手続きを完了する方向で協議が進んでいる。

日産は2009年に「グローバル本社」を都内から横浜市に移転。JR横浜駅に近い好立地にあり、日産車を展示するギャラリーなども含まれる。

日産は売却先と賃貸契約を結び、施設を継続使用する「セール・アンド・リースバック」を活用する方向で調整している。これまでに電通グループなども取り入れてきた手法で、本社を売却しても日産社員は同じ本社で業務を続けることができる。

日産関係者によると、リースバックによる賃料の支払いがキャッシュフロー(現金収支)を悪化させるとして、売却には反対の声も一部であがっていた。

日産の25年3月期の最終損益は6708億円の赤字(前の期は4266億円の黒字)と4期ぶりの赤字に転落した。赤字幅は過去3番目の大きさだった。今期はトランプ米政権による関税政策も経営の重荷となる。

経営再建に向け、26年度までに24年度比で固定費と変動費を合わせて計5000億円を削減する方針を掲げる。世界にある完成車工場は17カ所から10カ所まで減らす計画で、主力拠点である追浜工場(神奈川県横須賀市)での車両生産も終了する。

日産は資金調達を巡り、米ドル建てとユーロ建ての普通社債を発行し約6600億円を調達したと7月に発表した。ユーロ建ての新株予約権付社債(転換社債=CB)も約2000億円を発行し、総額約8600億円を調達した。

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