記者の質問に答えるクラフティアの石橋和幸社長=福岡市中央区で2025年10月7日、玉城達郎撮影

 電気工事や空調設備を手がけるクラフティア(福岡市)。九州で親しまれた旧社名の九電工から10月1日付で名前を変え、経営多角化や事業エリアの拡大を目指している。「会社を新たなステージに引き上げる」という石橋和幸社長(66)が描くクラフティアの未来の姿とは。

 ――近年、売上高が過去最高を更新し、存在感が高まっています。

 ◆九州の市街地再開発や半導体工場の設備投資に伴う大型工事が続いている。今後も全国的に受注は好調な見通しだ。経営多角化を進め、中期経営計画で2029年度の連結売上高を24年度比26%増の6000億円と想定している。出資などで東京の金融機関や大手企業と組む例も増え、これまでとは違う動きが出ている。社員にも新しい景色が見える会社にしたい。

 ――主力の工事事業からの経営多角化を図っています。

 ◆ゼネコンから電気や空調の工事を受注する仕事は増えた。ただ、工事は景気に左右されるので、住宅分譲や都市開発への参画といった不動産事業を強化している。これから増える蓄電池事業やデータセンターへの出資も進める。工事を受注しやすくなり、将来は配当金や売却益が期待できる。

 太陽光など再生可能エネルギーの電源を約500メガワット保有しており、国の固定価格買い取り制度(FIT)の期限が過ぎても発電による利益を生み出せる。蓄電池を組み合わせた効果的な電力販売に取り組みたい。

クラフティアの新しいロゴと従業員のユニフォーム=福岡市中央区で2025年9月30日午後3時5分、久野洋撮影

 ――海外や宇宙での事業展開も視野に?

 ◆東南アジアなどで工事受注や太陽光発電事業の拡大を目指している。ただ、東南アジアは地元の工事会社が育つなど、競争が激しい国もある。国内の工事が忙しいこともあり、慎重に地域を選びながら事業を進めている。24年に宇宙事業への参画も発表した。国内の地上施設の工事などを想定しているが、将来は宇宙空間での仕事を手がける夢も持ちたい。

 ――経営多角化では人材確保がカギになりそうですか。

 ◆新卒学生の採用競争は激しい。新事業の専門人材を獲得するための中途採用も大切になる。会社のイメージアップに向け、25年5月に本社を福岡市南区から天神地区の新しいビルに移転し、働く環境を向上させた。

 社名変更の効果もあり、26年春採用の新卒エントリー数は、2年前の2倍近くに増えた。女性や外国人にとっても働きやすい職場づくりに取り組み、空調と電気だけで約1000人いる直接雇用の技能職の待遇改善も進める。29年度までに、45歳時点の平均年収を1000万円まで引き上げられるように、給与アップも実行している。【聞き手・久野洋】

いしばし・かずゆき 1959年佐賀県生まれ。中央大理工学部を82年に卒業し、九州電気工事(現クラフティア)入社。人事労務部長、副社長などを経て2023年から現職。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。