日本航空が徳島阿波おどり空港(徳島県松茂町)に5日、電気自動車(EV)のトーイングトラクター2台を導入し、報道陣に披露した。脱炭素化が狙いで、成田空港(千葉県)や羽田空港(東京都)、南紀白浜空港(和歌山県)に続き、日航では4空港目の導入となる。
コンテナ引く車両
トーイングトラクターは、空港内で貨物や手荷物を収めたコンテナなどをけん引して運ぶ車両。日航は徳島阿波おどり空港にディーゼルエンジンで動く5台を配備しており、今回はこのうち2台をEVに更新した。2台のEVは豊田自動織機社製。メーカーカタログ価格で1台約770万円と、ディーゼルエンジンで動く従来車に比べ割高という。
今回導入したトーイングトラクターは、ディーゼルエンジン車と同等のけん引力があり、容量48キロワット時の蓄電池を搭載する。満充電から3日程度使うと、残量が20%近くまで減るため、空港内の貨物上屋で夜間などに約6時間かけて普通充電するという。
従来車更新時に
日航によると、同社が排出する二酸化炭素(CO2)のうち、99%以上は航空機によるもので、地上車両による排出はわずかだが、脱炭素化を加速させようと、導入した。
成田、羽田両空港では実証的に導入してきたが、今年度から、充電設備のある空港で更新期を迎えた車両について、EV化する方針とした。徳島阿波おどり空港については、運営する「徳島空港ビル」が貨物上屋内に充電設備を整備したため、EV導入が実現した。
CO2年3万トン削減
徳島阿波おどり空港では、日航が2024年5月から、別のトーイングトラクター2台について、廃食油を原料とするバイオディーゼル燃料に変更した。燃料は軽油が混入していない100%廃食油由来の「B100燃料」で、CO2を全く出さない燃料として扱われるため、2台で年3万トンのCO2排出を削減している。今回のEV導入により、さらに年約3万トンのCO2排出削減を見込んでおり、合わせて年6万トンの削減を期待する。
今後、徳島阿波おどり空港で軽油を燃料とする日航のトーイングトラクターは1台のみとなる。同社は「今後も電動化やバイオ燃料化を進めていきたい」と説明している。
グリーン電力でないが……
ただ、課題もある。充電設備を管理する徳島空港ビルによると、貨物上屋内の充電設備で給電されるのは、再生可能エネルギー由来の「グリーン電力」ではないという。
徳島県は毎年、県内から排出されるCO2やメタンなどの温室効果ガスの量を算出しており、最新データ(22年度)によると、全体の約9割を占めるCO2は約540万トンと13年度比で28・4%減少した。だが、排出部門別では、発電所などが分類される「エネルギー転換部門」は約26・5万トンと、13年度比29・9%増加した。
県サステナブル社会推進課によると、四国で大きなシェアを持つ四国電力の発電部門で化石燃料由来電力の割合が高いためという。
直接排出は削減
サプライチェーンを含めた温室効果ガス削減の国際的な分類方法では、自社が直接排出するガスを「スコープ1」、他社から供給されたエネルギーを使うなどして間接排出するガスを「スコープ2」と位置づけている。
今回の場合、日航にとって「スコープ1」は確かに削減できるが、「スコープ2」はわずかだが増加することになる。県が毎年算出するデータでも、「エネルギー転換部門」の増加要因となる点に留意する必要がある。【植松晃一】
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