精米工場で精米機に投入される玄米(画像はイメージ)

コメ卸大手の神明(東京・中央)と木徳神糧は10日、2026年4月に共同出資会社を設立すると発表した。折半出資する新会社を通じて佐賀県鳥栖市で精米工場を共同運営する。両社によると、精米工場は昨今のコメ不足問題で一時フル稼働したものの、平時は稼働率が低迷している。卸大手が連携して稼働率の向上に取り組み、コスト削減を目指す。

新会社は「日本精米センター」(鳥栖市)。玄米ベースで月間6000トンの精米能力をもつ神明の既存工場を新会社に移し、26年4月から共同運営する。日本精米センターの代表権のある会長に木徳の鎌田慶彦社長、社長には神明の藤尾益雄社長が就く。

佐賀の精米工場は直近数年の稼働率が平均50〜60%だった。神明はグループ全体の精米工場の稼働率を公表していないが、全国の中小企業が保有する分を含め、精米工場は稼働率に悩む例が少なくないという。

稼働率の低下はスーパーなどで売られる新米などの価格上昇の一因になることがある。都内で10日記者会見した藤尾氏は「コメ価格の高騰による市場の縮小を懸念している」と話した。木徳に佐賀の工場を開放することで稼働率を引き上げ、コメ価格が「消費者や顧客企業が買いやすい水準になるよう努めたい」と強調した。

神明の藤尾社長㊨と木徳の鎌田社長が新会社の社長と会長に就く(10日、東京都中央区)

共同運営は人口減による今後の市場の縮小をにらんだ動きでもある。工場の運営のほか、配送でも協力する。木徳の鎌田氏は「コメ卸が共同で同じ設備を使うニーズは今後も出てくると思う」と述べた。

コメ卸で構成する全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)が6月に公表した加盟各社の精米余力に関する調査によると、神明は1日当たり700トンの精米能力があるが余力はゼロだった。木徳神糧は416トンの能力のうち66トンの余力があると回答したが、フル稼働の場合で実際にはほとんど余力がないとしていた。

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