フジテレビ本社(東京都港区)

フジ・メディア・ホールディングス(HD)は10日、2026年3月期の連結営業損益が105億円の赤字(前期は182億円の黒字)になる見通しだと発表した。従来予想から15億円、赤字幅が縮小する。地上波テレビの広告収入が想定よりも回復し、収益性も改善する。

売上高の予想は前年同期比1%減の5443億円、最終損益は185億円の黒字(同201億円の赤字)とした。人権問題をきっかけに企業がCM出稿を控えていたが、傘下のフジテレビジョンで7〜9月期以降に広告収入の回復が進んだとしている。26年3月期の広告収入は前回予想から10億円増えて785億円を見込む。

配当は1株当たり年間配当の下限を50円に設定した。29年度までに2500億円規模を想定していた自社株買いについては、まず今後1年間で500億円を上限に取得を始めると新たに発表した。

フジ・メディアHDは株主からの要望を受けて9月末、成長戦略や資本政策の方向性について公表した。その際、4〜9月期決算の発表日までに具体的な方向性を追加で示すとしていた。今回の発表では、本業のメディア・コンテンツや不動産など各事業・資産の再編について速やかに着手し、一部は26年度までに実行するとした。再編の具体的な中身については触れていない。

不動産、物言う株主との攻防でなお焦点

焦点の一つが不動産事業だ。アクティビスト(物言う株主)で投資家の村上世彰氏らが関わる投資会社レノ(東京・渋谷)は、フジ・メディアHDに送った書簡で、不動産事業を手掛けるサンケイビル(東京・千代田)のスピンオフ(分離)検討を求めていた。

アクティビストとして知られる米ダルトン・インベストメンツとその関連会社も同様の要求をしており、10月に同内容を求める書簡を改めてフジ・メディアHD側に送った。

フジ・メディアHDは10日発表の資料で、不動産事業については「事業・資産構成の見直しを通じ、より資本効率の高いポートフォリオを実現する」と言及するにとどめた。アクティビスト側が求める分離については触れておらず、今後圧力が強まる可能性がある。

PBRは1倍に近づく

アクティビスト側はPBR(株価純資産倍率)1倍の早期実現を求めている。QUICK・ファクトセットによると、フジ・メディアHDのPBRは10日時点で0.91倍となっている。株価は10日終値が3564円と年初から2倍を超える水準で推移している。

フジ・メディアHDが目標に掲げている自己資本利益率(ROE)8%以上の実現に向けて、新たに中長期の経営目標を公表した。33年度にメディア・コンテンツ事業の営業利益は400億円、不動産事業では350億円を目指すとした。

放送事業の収益改善に加えて、知的財産(IP)開発や連動したIPビジネスを多角的に展開することで、コンテンツ領域を拡充する。今後5年間でメディア・コンテンツ事業に1500億円、不動産事業へ1000億円を投じるとし、成長投資の内訳を初めて明らかにした。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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