栃木県鹿沼市の葬儀会社に勤務していた男性(当時50代)が自殺したのは、当時の経営者にいわれのない詐欺の疑いをかけられ解雇されたことや長時間労働が原因だとして、男性の遺族が同社に損害賠償を求めた訴訟で、宇都宮地裁(本多哲哉裁判長)は13日、会社側の過失を認め、約8200万円あまりの支払いを命じた。
判決によると、男性は返礼品を管理する業務を担当していた2019年4月、別の従業員による詐欺行為に関わったと当時の経営者から疑いをかけられ、解雇された。男性は無実を訴えていた。
また、解雇される直前の3カ月は月100時間前後の時間外労働を強いられていた。男性は解雇後に精神障害を発症し、同年8月に自ら命を絶った。男性の遺族は23年1月、会社側に損害賠償を求めて提訴した。
詐欺行為をしていた従業員は、客との返礼品のやり取りに関して会社に虚偽の申告をし、現金をだまし取っていた。本多裁判長は、関係証拠から男性がこの詐欺行為に関与していないと認め、「いわれのない犯罪嫌疑をかけられ、自らの弁明を聞き入れられることなく、心理的負荷は極めて強かった」と、一方的に解雇した当時の経営者の過失を認定した。
そして、この解雇や長時間労働を放置し続けた会社側の行為と自殺との因果関係があったとする原告側の訴えを認めた。「自殺に至るとは予見できなかった」とする会社側の主張は退けた。
判決後に記者会見した男性の妻は「夫を亡くなるところまで追い込んだ会社を一生、許すことはできない」と声を震わせた。男性の長男は「訴えが認められ少し肩の荷が下りた。ただ、恨みや憤りが無くなったわけではない」と語った。
会社側の代理人弁護士は「判決は、当方の主張と大きく乖離(かいり)しており、控訴を検討せざるを得ないと考えている」とのコメントを出した。【池田一生】
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