「ライター稼業だけじゃ私はまったくもう生活できない。」
8月31日、フリーライターの厳しい状況を吐露したX(旧ツイッター)への投稿が、SNSを中心に議論を呼んだ。一連の投稿のインプレッション数は400万超に。
昨年11月には、フリーランス保護を目的とした「フリーランス新法」が施行された。しかし、出版不況で原稿料は先細りし、フリーライターの弱い立場も大きくは変わっていない――。そんな実情が浮き彫りになった。
【theLetter無料オンラインイベント】原稿料崩壊時代、「『書く』で生きる」は続けられるのか? ─ フリーライター×編集者が語るリアルな本音
ライターとして働くのが難しくなってきているように見える昨今。既存メディアの衰退とAIの登場でその傾向が強まっているのでしょうか? フードライターでコラムニストの白央篤司さん、フリーライターの高橋ユキさん、編集者であり記者でもある亀松太郎さんが、ここでしか聞けない本音を90分間語り合います。
投稿したのは、フードライターでコラムニストの白央篤司さん(50)だ。親の介護などが頭をよぎり、「ここ10年ほど抱いてきた、ライターという仕事への閉塞感や、若い人たちが業界に入ってこなくなるのではないかという危機感。色々な思いが重なってあの投稿につながった」と話す。
フリーランスは、自ら事業を営んで収入を得る「個人事業主」だ。契約形態は業務委託となり、企業に雇用されないため、長時間労働の規制がないほか、待遇面でも不利になりやすい。とりわけフリーのライターは、報酬の交渉や仕事の受注で、出版社の正社員であることが多い編集者に対して弱い立場に置かれがちだ。フリーランスの実態調査や政策提言をするフリーランス協会の「フリーランス白書2025」によると、出版・メディア職種では「諾否の自由がなく、ほぼ専属のように働かせられる」という声が目立つという。
厳しい報酬、生成AIとの競争
報酬面も厳しい。支払いが遅れたり、発注額を事前に示されなかったりする事例がある。雑誌の休刊も相次ぎ、仕事の量は縮小。外部ライターの機会は減っているという。
ウェブメディア「ライターマガジン」が2023年12月に公開した「第4回フリーライターのリアルアンケート結果発表2023【お金編】」では、直近3カ月の平均月収について「10万~20万円」が最多で22.9%。20万円以下との回答を合わせると約45%に上った。白央さんは「ライター稼業だけで生活できる人は一握り。正業をほかに持っていたり、パートナーの収入があったりする人しかできなくなっているのが実情だ」と言う。「連載が続いても原稿料は上がらず、ページビュー(PV)の成果も報酬に反映されにくい。値上げ交渉は相当難しい」とも話す。フリーランスを対象にした各種アンケートでも、単価据え置きや評価の不透明さを訴える声が目立つ。
フリーランス新法の施行後、公正取引委員会は今年6月、フリーランスの雑誌ライターらに取引条件を明示しなかったうえ、報酬を期日内に支払わなかったとして、出版大手の小学館(東京都千代田区)と光文社(文京区)のフリーランス法違反を認定し、再発防止などを求める勧告を出した。フリーランス保護が進む中、白央さんは、大手では発注書の徹底などの対応が進んだものの、「中小は追いついていない」と指摘する。ライターの現場は編集者との一対一の関係になりやすいため、ハラスメント窓口の明示なども必須だと訴える。
課題山積のライター業界は、生成AIとの競争にもさらされる。実際、編集部がライターを介さずに作成した記事や、ライターにAIの使用を求める案件があるとの指摘は、SNS上でも散見される。「AIがライターに取って代わり、仕事を奪っていく」未来は絵空事とは言い切れないとの危機感もささやかれる。ただ白央さんは「だからこそ、実際に取材し、読み物として仕上げられるライターの価値は上がっていく可能性もある」と期待を寄せる。
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20日午後8時から、ライターの現状や将来について現場のライターらが本音を語るオンラインイベント「原稿料崩壊時代、『〝書く〟で生きる』は続けられるのか?」が開かれる。白央さんのほか、フリーライターの高橋ユキさん、編集者であり記者でもある亀松太郎さんが参加する。参加費無料。登録は以下のウェブサイトから。https://news.theletter.jp/events/33
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