トランプ米大統領は14日、牛肉やコーヒー豆など多くの農産物・食品について、世界各国に対する「相互関税」の対象外とし、関税を大幅に引き下げる大統領令に署名した。米国内で食品などの生活費高騰への懸念が高まる中、店頭価格を抑える狙いがあるとみられる。「関税は物価上昇(インフレ)を招かない」と主張してきたトランプ政権にとって、今回の措置は事実上の方針転換と言えそうだ。
関税引き下げは米東部時間13日午前0時(日本時間13日午後2時)過ぎにさかのぼって適用される。米国で生産されていない、もしくは米国内の生産で需要を十分に賄えないものが対象で、牛肉やコーヒー豆のほか、バナナやオレンジ、パイナップル、トマトなど数十品目に及ぶ。米ホワイトハウスが14日公表した付属文書によると、コメは関税引き下げの対象に含まれていない。
トランプ氏は大統領令で、他国との貿易交渉の進展や、食品の国内需要や生産能力を考慮した上での判断だと記した。14日夜には記者団の取材に対し、追加の関税引き下げは必要ないとの認識を示した。
9月の米消費者物価指数の上昇率は、食料品が前年同月比で3・1%だった。品目別では、生の牛肉が12・4~18・4%、コーヒーが18・9%、バナナは6・9%となっている。
トランプ氏はこれまで「関税は消費者の負担にならない」などと主張してきた。ただ、11月4日の米東部ニューヨーク市長選や二つの州知事選では価格高騰対策が争点の一つとなり、いずれも「反トランプ」を掲げた民主党候補が共和党候補に勝利した。来年11月の中間選挙を見据え、対応を迫られた面がある。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は今回の措置について「トランプ氏が自らの関税政策がインフレを招くと暗に認めた」との専門家の見方を紹介した。【ワシントン浅川大樹】
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