山口健さん=北海道千歳市で2025年10月27日、高山純二撮影

 23歳の若さで叔父が経営する建設会社から独立し、久健興業を興した山口健(たけし)さん(44)=北海道千歳市。集まってくる社員も血気盛んな若者が多く、街や現場でけんかも絶えない。ベテランの職人から若いというだけで理不尽な扱いを受け、悔し涙を流したこともある。「続けていれば、いつか俺らの時代が来る」。社員にも、自分自身にもそう言い聞かせて歯を食いしばった。

 独立した2004年、平成に入っているとはいえ、建設現場はまだまだ合理化していない作業が多々残っていた。より早く、そしてきれいに作業を終えるよう、作業方法の変更を提案しても、年上の職人は「昔からこうやっていたんだ」と従来の方法に固執する。「ガキのくせに何を言っているんだ、という雰囲気だった。理不尽だと思っても我慢し、ぐっと飲み込んだ」

 人を雇うようになると、職人として技量の足りない若者もおり、現場でなめられ、いじめられてしまうこともある。「技術がないなら材料集めに120%の力をかけろ、と指導した。職人の仕事ができなくても、ごみ捨てなど、できることはある。理不尽なことを言われても、けんかしないで帰ってこいよと言ってきた」

 継続して働いてもらうことの難しさも体感した。身の丈に合った経営をすれば、おのずと給与・待遇に限界が出てくる。いわゆる「3K職場」(きつい、汚い、危険)でもあり、若者は給料が良かったり、待遇が良かったりする会社に転職してしまう。頼まれて雇用したのに、すぐに辞められてしまったこともあった。会社は少しずつ成長し、仕事量が増えていったにもかかわらず、新規雇用はどんどん難しくなっていった。

 そんな時、後輩から聞いたのが外国人技能実習制度だった。「最初は、人手不足を補う安い労働力だと考えていたけど、すぐにそんな気持ちじゃダメだと思った。彼らはみんな夢を抱いて来日する。日本人を雇うのと同じく、雇う以上は彼らの人生を背負う覚悟が必要だった」

 ベトナムから技能実習生を迎え入れた当初は、指導に当たる日本人従業員の理解を得られず、現場で日本人とベトナム人が衝突することもあった。しかし、なぜ外国人を雇う必要があるのか細かく説明し、売り上げが上がった分は還元することで、日本人従業員の間で「一緒に働くことが自分たちのプラスにもなる」という意識が浸透。ベトナム人の給与体系もほぼ日本人と同じにするなどして、両者の摩擦を解消した。

 昨今は、外国人との共生がクローズアップされ、全国各地で摩擦も生んでいる。同社は現在、およそ65人の従業員のうち20人ほどがベトナム人。外国人とうまく共生しながら、グループ全体で年約10億円を売り上げている。技能実習生が北海道に来たくなる仕組みをつくろうと、実習生の受け入れ業務を担う監理団体「ISD協同組合」や、働く前の入国後講習などを行う「外国人日本語学習支援センター」も千歳市内に設立した。

 「ベトナム人にも仕事ができる子もいれば、できない子もいる。言葉の壁があるけれど、日本人と全然変わらない。むしろ日本人よりハングリーで、生きる力があると思っている。外国人を否定的に捉えるのではなく、肯定的に捉えて日本人と外国人がお互いに支え合う会社でありたい」。お互いが幸せになるためにはどうすればいいのか。絶えず模索し、実践し続けている。【高山純二】

山口健(やまぐち・たけし)さん

 1981年生まれ、千歳市出身。千歳北陽高中退。2004年、建設会社「久健興業」創業し、現在は就労継続支援B型事業所やグループホームも運営。道鳶土木工業連合会理事。

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