トランプ氏と握手する赤沢氏=米大統領次席補佐官X(旧ツイッター)から(背景のアラスカLNGイメージはALASKA LNGホームページから)
日米関税交渉が7月下旬に決着しました。企業の経営環境が見通しやすくなるとの期待はつかのまでした。約束した対米投資に資源開発や造船などが挙がりましたが、詳細は示されずに日本企業は対応に苦慮しています。肝心要の関税率も日米の説明に食い違いが生じ、既存の関税率に15%が「上乗せ」される状態の解消にめどはついていません。合意文書にこだわらなかった日本政府の曖昧戦略は、トランプ関税の不確実性を色濃く残す結果を招いています。日本企業に広がる波紋を追った連載「トランプ2.0ビジネス大転換 日米合意の波紋」をまとめました。
(1)米アラスカLNG、日本企業出資へ増す圧力 台湾やタイは調達に名乗り
アラスカLNGイメージ=ALASKA LNGホームページから
「アラスカで日本は我々と液化天然ガス(LNG)の合弁事業を立ち上げようとしている」。トランプ米政権が日米関税交渉の合意を発表した7月22日(現地時間)、トランプ氏はホワイトハウス内のイベントで、日本とのLNG事業に言及した。距離を置いてきた日本勢の出資への包囲網が敷かれつつある。…記事を読む
(2)米国造船支援、笛吹けども踊らぬ日本 韓国は22兆円投資
トランプ米政権は日本と韓国からの投資を通じて、衰退した造船産業の立て直しを模索している
日米関税合意に盛り込まれた5500億ドル(約80兆円)の対米投資枠組みの対象分野に造船が含まれた。日本の造船業界からは人件費が高く、部材を調達しづらい米国への直接投資は難しいとの声が上がる。ライバルの韓国は1500億ドルを造船での協力促進に充てる方針だ。対照的な投資姿勢の違いは、日韓造船の将来を分ける可能性がある。…記事を読む
(3)おびえる中小企業、トランプ関税が招く減産ドミノ 「仕事なくなる」
自動車部品会社のニッショウテクノスはトランプ関税で減った受注の回復に期待するが…
8月7日、米国の自動車関税(15%)が当初の日本政府の説明と異なり、従来の関税に上乗せする形で運用が始まった。大阪府内の鉄鋼関連会社の社長は表情を曇らせながら懸念を吐露した。「トランプ関税は日本の自動車大手の業績にマイナス。われわれ中小企業が安価な海外部品との競争にさらされる機会が増え、仕事が減ると心配している」…記事を読む
(4)混乱の世界貿易、海運需要を先食い 企業にくすぶる在庫超過の火種
川崎汽船の自動車運搬船の搬入口
日米関税交渉の合意で米国に輸出する日本車への関税率が引き下がる見通しとなった。自動車の世界運搬シェアで4割を握る日系海運大手にも安堵感が広がる一方、トランプ関税は荷主の心理を揺さぶる。輸出の前倒しが起きた影響で国際通貨基金(IMF)は2026年の世界貿易量を下方修正した。荷動きの混乱は収まりそうにない。…記事を読む
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