農林水産省は21日、今年度補正予算の農林関係重点事項案を自民党の部会で示した。高止まりしている米価対策として流通を効率化し、「多様な価格帯の米」を安定供給するモデル構築の支援などを盛り込んだ。スーパーで並ぶ家庭向けのコメよりも、比較的安値で取引される業務用の品種などを念頭に消費者に届ける取り組みを後押しする。
主食用米の中には、中食や外食向けに安値で出す業務用がある。生産コストを抑えるため、コシヒカリよりも10アール当たりの収穫量が多い「多収性」の品種が使われることが多い。高温に強い「にじのきらめき」などの品種が挙げられる。
こうした多収品種はコシヒカリより収穫量が多くなる分、食味は落ちると従来思われてきたが、品種改良で食味も向上しつつある。
現在、スーパーで売られる各産地の銘柄米は5キロ4000~5000円台以上と高値で推移し、2000円程度で販売された随意契約による政府備蓄米も店頭からほぼ消えている。店頭に並ぶ国産米の価格帯は幅が狭く、鈴木憲和農相は10月31日の記者会見で「低価格帯も含めた多様なニーズに応えられるような多様な生産を確保することが何よりも重要」との認識を示し、業務用は外国産米の価格帯に対抗できる可能性も挙げている。
そのため補正予算に盛り込む重点事業では、小売業者などが、多収品種の導入や、種を直接田んぼにまく直播(ちょくはん)栽培といった生産性向上に取り組む産地と長期契約を締結し、多様な価格帯のコメを店頭に並べる流通効率化のモデル作りの支援に取り組む方針だ。
このほかの重点事業には、高市政権肝いりの植物工場の整備や最新技術の「フードテック」を活用したビジネスモデルの実証を支援することを記載。また水田の畑地化を推進するほか、米粉用米の安定供給と需要創出、コメの安定生産に向けて高温耐性品種などの種子の需要増加に対応する取り組みの支援なども盛り込んだ。【中津川甫】
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