
サイバーエージェントの藤田晋社長が12月中旬に社長を退任し、代表権を持つ会長に就きます。強烈なリーダーシップを持つ創業社長が次世代にどのように会社を引き継ぐのか、2000年前後に台頭した多くのネット企業にも参考になりそうです。同社の社長交代を巡る記事のまとめ読みです。(内容や肩書などは掲載当時のものです)
「世界に通用するIP創出」 サイバー、初の社長交代
藤田晋社長と山内隆裕次期社長が19日、日本経済新聞の取材に答えた。主なやりとりは以下の通り。
――早い段階から後継者育成に取り組んできた理由は何ですか。
藤田氏「創業社長は経験値や成長機会を独り占めしてしまう。何十年もやれば圧倒的になってしまい、イエスマンばかりが育ってしまう。これが創業社長が会社を引き継げなくなっていく理由だと思う」
「成長機会を次世代に分けることが引き継ぎだ。早いうちにやらなければ手遅れになる。プレッシャーのかかる局面を経験することで次の世代が育っていく。まず社長を交代してから本格的に引き継ごうという考えなので、これからが大変だ」
「4年後なら僕もまだ若いし、健康不安やスキャンダルなど差し迫った問題もない。バトンを渡しておまえの好きにやってみろというのはある意味簡単だが、そんな甘いものではない。交代の準備を進めるために万全を期してきた」
山内氏「次につないでいく会社にしなくてはいけないと、プレッシャーと責任をひしひしと感じている。立場が伴ってからでないと見えない景色がある。4年間、藤田に伴走してもらえるのはありがたい」
――以前「後継者に自分の分身は求めない」と発言していましたが、研修内容をみると藤田社長の思考プロセスをなぞるものも多く感じます。
藤田氏「(座学だけの)引き継ぎが難しいのは①会社を理解した上での意思決定②事業構想力や市場への洞察力③求心力――だ。求心力については、交代してしまえば『もう社長は藤田じゃない』ということが染み込むように伝わっていく。意思決定では、僕はゼロから会社をつくっているので(すべての意思決定の)辻つまが合うが、いきなり自分なりのやり方でやらせてうまくいくわけがない。これまでのやり方を理解した上で、自分なりに進めてほしい」
――2027年をめどに山内氏が新体制と中長期ビジョンを発表するとしています。藤田氏退任後のサイバーの姿をどう描きますか。
山内氏「会社を盤石にするためにも今の既定路線をしっかりと引き継ぐのが最優先だ。中長期としてはグローバルにIPをヒットさせ、収益力を上げることを進めていく」
「ヒットを生むには先行投資が必要だが、自社のIPがあればゲームやマンガ、ウェブトゥーン、キャラクターなどで(インターネットテレビの)ABEMA(アベマ)を中心とした経済圏ができる。『鬼滅の刃』の海外での成功をみても、いいものをつくれば一気にグローバル化する動きが加速している。コンテンツ開発の指揮も引き続き自ら執り、いいものをつくり出せる人にいい環境を用意していく。クリエーティビティー(創造性)の高いものに集中していく」(続く)
【藤田氏の次世代候補づくりへの思いなどを語ったインタビュー詳報はこちら】
- 退任するサイバー藤田晋社長、続ければ「イエスマンばかり育ってしまう」
サイバーエージェント社長に山内氏 藤田氏が託す「ABEMA」経済圏

サイバーエージェントは14日、創業者の藤田晋氏(52)が社長職を退き、山内隆裕専務執行役員(42)が12月12日付で社長に昇格する人事を発表した。10年越しで黒字化を達成した「ABEMA(アベマ)」などメディア事業を土台にし、独自の知的財産(IP)を創出して配信から広告、ゲーム化などと稼ぐ経済圏づくりを急ぐ。
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「ABEMA」黒字射程内 サイバーエージェント、藤田晋氏10年の賭け(The Strategy サイバーエージェントの研究)

2026年に配信10年を迎えるインターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」の黒字化が見えてきた。サイバーエージェントが藤田晋社長の肝煎りで立ち上げ、赤字覚悟で異例の長期投資を続けた。ようやく知的財産(IP)の創出から収益化につなげる循環の素地も整った。広告、ゲームに次ぐ第3の柱としてのアベマの成長が、次の10年を左右する。
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サイバー藤田社長、26年に会長へ 新社長は内部昇格(2023年3月の記事)
サイバーエージェントの藤田晋社長は23年3月、自身のブログで2026年に同社の会長になるとの意向を示した。対外的な公表は初めて。新たな社長は内部から昇格させる考えだ。会長になった後も藤田氏は最高経営責任者(CEO)として当面、経営を主導する方針。引き継ぎを進め、「どこかのタイミングで身をひくつもり」としている。
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