あらかじめ決めた時間働いたとみなす裁量労働制について、厚生労働省が自民党の会合で「(時間外労働の)上限規制が適用されない」との資料を示して説明していたことについて、上野賢一郎厚労相は25日の閣議後会見で、資料の記載を認めつつ、「適用労働者の実際の労働時間に関しては、上限規制の適用がかからないことを表現したもの」などと説明した。

 上野氏は、厚労省が自民会合で示した資料について、「ご指摘の記載があった」と述べ、裁量制に「上限規制が適用されない」との記述があったことを認めた。

 一方、その記述は、上限規制が適用される裁量制のみなし労働時間ではなく、労働者が実際に働いた時間に適用されないとの趣旨を説明したものだとの認識を示した。

上野大臣、是非に触れず

 裁量制のみなし労働時間にも上限規制は適用され、今回の説明について厚労省幹部は朝日新聞の取材に「不正確な説明だった。裁量制が悪用されないとは言えず、配慮が足りなかった」などと釈明。資料の当該部分には「実際に働いた時間」に関する記載はない。

 上野氏は今回の説明の是非には触れず、「厚労省の審議会で裁量労働制について労使双方からいろんな意見を頂いており、現場の働き方の実態、ニーズなどを踏まえて(労働時間規制の見直しの)検討を深めていきたい」などと述べた。

 裁量制をめぐり、厚労省は実際に働いた時間がみなし労働時間と大きく乖離しないよう指導している。ただ、実際に働いた時間は把握が難しく、長時間労働の「抜け道」になっているとの指摘があるなかで、厚労相の「実際の労働時間には上限規制の適用がかからない」との発言は国会内外で議論を呼ぶ可能性がある。

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