現金取り扱いの終了を知らせる京王バスの運賃機
京王バス(東京都府中市)を傘下に持つ京王電鉄バス(同)グループは早ければ2027年度にも、路線バスの全路線で現金の取り扱いを終了する。バスの車内放送や掲示物で周知を図り、ICカードやクレジットカードでの決済に切り替えてもらう。現金取り扱いの手間や心理的負担を減らして人手不足に対応する。国交省物流・自動車局旅客課は「全路線をキャッシュレス化した事例はまだない」という。

東京都世田谷区や調布市、三鷹市で運行する調布営業所の管轄路線で現金を取り扱わない実証運行を始めた。ICカードの残高チャージも駅や店舗などで事前に済ませてもらう。利用者が現金しか持たずに乗車した場合は、やむなく現金で受け取る。26年度にかけて対象路線を増やす。

あわせて実証運行をしていない路線も含めて全路線のバスの運賃機の硬貨投入口に「27年に現金取り扱いを終了する」旨を記したカバーを順次取り付ける。乗客が現金で支払う際には毎回カバーを開閉して取り組みを広める。あえて暦年表記とし、早めにキャッシュレス決済に切り替えてもらう。

バス運転手が車内で現金を取り扱う手間や、営業所で現金を入れた金属製の箱を出し入れする手間を減らす。京王電鉄バス運輸営業部の早田俊介課長は「現金の取り扱いは多寡によらず責任や心理的負担が重い」と説明する。業務を減らして運転などの仕事に集中してもらう。

調布駅のバスターミナルを走る京王バスの車両

キャッシュレス決済機より故障頻度が高い現金収受の機械を減らし、修理の手間やコストも削減する。全路線約700台のうち降車時に支払う「後払い」方式の約500台では整理券を発行する機器を使う必要があり、さらなるコスト削減効果を見込む。

同社グループの運賃支払いにおける現金比率は24年度に3.9%と23年度比で0.2ポイント低下。全国のバス会社の中でも現金比率が低く、キャッシュレス化を後押しした。

例えば高齢者の現金決済比率も低めだ。東京都では70歳以上の都民が公共交通機関を定額利用できる「シルバーパス」が普及しており、運転手に見せるだけで乗り降りできる。

早田課長は「現金比率が高い人の属性がまちまちだ」とし、多様な周知方法を探る。これまでに近隣の商業施設ではチラシを配布しており、今後はキャッシュレスを周知するウェブサイトも用意していく。

(橋本剛志)

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