
【ラスベガス=清水孝輔】米アップルは1日、生成AI(人工知能)開発トップのジョン・ジャナンドレア氏が上級副社長を辞任し、2026年春に退社すると発表した。ジャナンドレア氏が統括してきた部門を分割し、基盤モデルの開発などを新たに採用したAI研究者に引き継ぐ。開発で出遅れが目立つ中、組織再編で巻き返しを図る。
ジャナンドレア氏は26年春に退社するまでは顧問を務める予定だ。アップルは米グーグルでAI開発を率いていた同氏を2018年に採用した。ティム・クック最高経営責任者(CEO)の直属の幹部としてAI研究を全面的に任せてきた。
アップルは1日、グーグルや米マイクロソフト出身のAI研究者であるアマル・スブラマニア氏が加わったと発表した。スブラマニア氏は副社長として、ジャナンドレア氏が率いてきた生成AIの基盤モデルの開発などを担う。クック氏の直属ではなく、ソフトウエアエンジニアリング担当のクレイグ・フェデリギ上級副社長の部下となる。
アップルはジャナンドレア氏の退社に合わせ、組織体制を見直す。ジャナンドレア氏はモデル開発だけでなく、音声アシスタント「Siri(シリ)」などAI関連の部門を全般的に担っていた。今後は開発チームを3つに分割し、スブラマニア氏が引き継ぐ分野以外の2つは社内のほかの組織に統合する。
アップルは生成AIの開発が競合に比べて出遅れている。24年10月に提供を始めた自社開発の生成AI「アップルインテリジェンス」は性能や機能が見劣りすると指摘される。シリの機能をAIで高める開発計画も当初予定から遅れ、展開は26年になる。
米ブルームバーグ通信は11月、アップルがシリ向けにグーグルの基盤モデル「Gemini(ジェミニ)」の採用を計画していると報じた。アップルは対価としてグーグルに対し、年間10億ドル(約1550億円)を支払う方向で協議しているという。自社開発モデルの性能が向上せず、他社製の採用を検討せざるを得ない状況に陥っている。
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