1日に記者会見を開き将来の構想を語った(左から、イオンの吉田昭夫社長、ツルハHDの鶴羽順社長、ウエルシアHDの桐沢英明社長)

ドラッグストア大手のツルハホールディングス(HD)とウエルシアHDが経営統合した。業界最大手として売上高は2兆円を超え、再編を主導したイオンが傘下に収める。

ドラッグストアは医薬品を柱に日用品や食品を幅広く扱い日々の生活に浸透している。今後は増加する高齢者を地域で支える拠点となれるように、病院で処方される薬の調剤や介護関連サービスなどの機能も充実させてほしい。

身体の軽い不調に際し、市販薬も活用して自分で対処することをセルフメディケーションという。健康意識を高め、医療費を節約する効果が期待される。市場規模が9兆円まで成長したドラッグストアは市販薬販売の主要な担い手である。薬剤師らが適切に情報を提供し、医薬品を安定して供給する責任はより重くなっている。

国や自治体は医療、介護や生活面で高齢者を地域で支える「地域包括ケア」の体制整備を進めている。身近なドラッグストアはこれに貢献する事業を広げていくことが望まれる。例えば患者の自宅に薬剤師が薬を届けて服薬の指導をしたり、店舗で介護に関する相談を受けたり、実際に介護サービスを提供したりといった多様な役割を担うことができる。

人口減少で小売店が閉鎖して生活必需品の購入に困る「買い物弱者」が各地で増えている。医薬品で利益を確保しながら、割安な食品を強化しているドラッグストアは人が少ない地域でも運営しやすい強みがあり、新たな生活インフラになりつつある。山間部などでウエルシアHDが手がけてきた移動販売車の運用も、高齢者にとって便利な買い物手段になり得る。

課題は高齢者のニーズに応えられる質の高い人材をいかに育てるかだ。2社の統合によって1万2000人以上の薬剤師を有することになるが、業界全体では地方の店舗を中心に人材の確保が容易ではないといわれる。給与面などの待遇向上や働きやすい環境の整備が急務である。

もうひとつ大きな課題は処方薬の受け渡しを含めてインターネットの活用を広げることだ。オンライン服薬指導によって患者は自宅で処方薬を受け取れる。電子処方箋の普及など環境が整えば、利用が増えるだろう。外出しにくい高齢者を支援するためにも、安全を確保しながらサービスのデジタル化を進める必要がある。

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