量産終了後に修理などのために使われる「補給部品」の価格を据え置いたことが下請法違反(買いたたき)にあたるなどとして、公正取引委員会は8日、スズキ完全子会社のスニック(静岡県磐田市)に再発防止を求めて勧告した。

公取委が補給部品の価格設定を買いたたきと認定し、勧告するのは初めて。発注量が大幅に減ったにもかかわらず、取引条件を十分に見直さない商慣行は自動車業界に根付いているとみられ、各メーカーが是正を迫られる。
スニックはスズキ車に使われるシートやパイプといった自動車部品を製造している。補給部品を含めた製造を下請け企業に委託するとともに、必要な金型を貸与していた。
公取委によると、同社は遅くとも2024年3月以降、下請け企業10社に対し量産終了後に大幅に発注が減ったにもかかわらず、318種類の部品について量産期間から価格を据え置いていた。
今回違反認定されたのは、量産期と比べ発注量が5割以上減少した部品で、ほとんどが1割以下になっていた。
補給部品は原材料の仕入れや労務費などの関係から製造コストが高くなる傾向にある。公取委の調査に一部の下請け企業は「量産時を前提に受注すると大幅な赤字になる」と答えたという。
下請法は発注側が下請け代金を決定する際、通常の対価より著しく低い額を不当に定めることを「買いたたき」として禁じる。スニックは量産期間が終わっても価格について協議をしておらず、一方的に不合理な価格設定で発注していたと判断された。

勧告では、下請け企業と協議して発注単価を引き上げ、違反期間までさかのぼって差額を支払うことなどが盛り込まれた。
また、同社は遅くとも24年3月以降、下請け企業14社に対し金型など880個を長期間発注しないにもかかわらず、無償で保管させた行為に対しても勧告を受けた。同社はすでに保管費用の一部に相当する841万円を下請け企業に支払った。
調査は中小企業庁が担い、11月上旬に勧告を求めて措置請求した。25年度の措置請求に基づく勧告は11月の三菱ふそうトラック・バスなどを含め5件目となり、過去最多となった。
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