
三菱重工業は10日、アンモニアを水素と窒素に分解する際、従来に比べて低い温度で分離できる技術の実証に成功したと発表した。日本触媒と共同開発した特殊な触媒を使った。分解時の燃料費を抑えられるほか、高温分離に必要なレアメタル(希少金属)の触媒を使わずに済み、低コストを実現できる。2030年度にも実用化を目指す。
三菱重工が開発した蒸気加熱方式は、液体アンモニアを気化させたあと、450〜500度の蒸気で加熱して、水素と窒素を分離する。この温度であれば工業プラントなどの排熱を利用できるため、燃料費を抑えやすい。
従来は700度と高温状態にして水素と窒素を分離する方式が一般的だった。この方式ではレアメタルのルテニウムを触媒に使う必要があり、安定調達にも課題があった。

三菱重工が開発した技術では従来と比べて、運転コストを2割ほど下げられるという。1日あたり0.25〜2.5トン程度の水素製造を想定しており、中小口向けの需要を想定する。
脱炭素の実現に向けて、燃焼しても二酸化炭素(CO2)が出ないアンモニアや水素は次世代の燃料として期待がかかる。水素はマイナス253度で液化するのに対して、アンモニアはマイナス33度で液化するため、海外などからの長距離輸送に適している。
同日の記者会見で、三菱重工のGXセグメント企画管理部の鹿島秀一部長代理は「水素供給網が整っていない日本などの地域では需要地で水素に分離する方式が需要が高い」と説明した。アンモニアを使いながら水素活用を促進させるため、アンモニアの分解コスト低減に取り組む。
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