任天堂のゲーム機「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ・ツー)」

【ニューヨーク=谷本克之】任天堂の株価が8月の直近高値から2割下落し低迷している。人工知能(AI)ブームでゲーム機「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ・ツー)」に使うメモリーの価格が4割上昇し、利益を圧迫する懸念が出ているためだ。AIインフラ向けに急増する半導体需要のしわ寄せが、電子機器や家電に及んできた。

メモリー価格は4割上昇

任天堂の株価は10日、終値で前日比2.7%安の1万1580円となり、4営業日連続での下落となった。8月18日の取引時間中につけた年初来最高値から2割安に落ち込み、時価総額にして約4兆1700億円が失われた計算になる。

株価下落の一因となっているのが、スイッチ2に使用されているメモリー関連の部材の高騰だ。

米ブルームバーグ通信によると、スイッチ2に搭載されている12ギガバイトのRAM(随時書き込み読み出しメモリー)モジュールの価格は今期41%上昇した。内蔵されている長期記憶型のメモリーNANDストレージも約8%上がっている。

台湾の調査会社トレンドフォースは、2026年にスイッチ2のメモリー部分のコストは総コストの21〜23%に上るとし、ゲーム機の原価は25年第1四半期から26年第4四半期にかけて15%上昇すると予測する。前のモデルを上回るペースで売れているスイッチ2の利益率の大幅低下がへの懸念が広がる。

AI需要でゲーム機が犠牲に

メモリー価格の世界的な上昇の背景にあるのが、足元で膨らむAI需要だ。AIの学習や推論に必要なデータセンターの建設計画が相次ぐなか、データの高速処理に不可欠な「広帯域メモリー(HBM)」の需要が急増している。

HBMは利益率が高いのが特徴で、メモリー半導体の供給の9割を占めるサムスン電子、SKハイニックス、米半導体大手マイクロン・テクノロジーの3社は、生産資源を汎用的なRAMからHBMに振り向け始めている。

さらに米国による中国への半導体輸出制限が需給のひっ迫に拍車をかけている。

スマホやパソコン価格も上昇へ

メモリー価格の上昇はパソコンやスマートフォンの販売にも影響を広げる。トレンドフォースによるとパソコンの中国レノボ・グループは、メモリー価格の上昇に対応するため、26年初頭の製品価格の引き上げを顧客に通知し始めた。米デル・テクノロジーズも早ければ25年12月中旬にも製品価格を15〜20%引き上げるという。

デルのAI対応のノートPC

トレンドフォースは12月、小売価格の上昇や割引率の低下で、26年の電子デバイスの需要はスマートフォンで前年比2%減、ノートパソコンで2.4%減、ゲーム機で4.4%減となる予測を出した。

メモリーなどは短期的な増産が難しく、需給バランスの安定には時間がかかるとの見方が多い。

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