サントリー社長に就任する西田氏㊧とサントリーHD社長に専念する鳥井氏

サントリーホールディングス(HD)は11日、国内酒類事業会社のサントリーの社長にサントリーHDの西田英一郎常務執行役員(60)を充てる人事を発表した。2026年1月1日に就任する。これまで創業家出身でサントリーHDの鳥井信宏社長が兼務していたが、鳥井氏はサントリーHDの社長に専念する。

サントリーは22年7月に国内に5つあった酒類事業会社を統合して発足した。社長に当時HDの副社長だった鳥井氏が就いた。この間、ビールでは新主力品「サントリー生ビール」を投入したほか、ノンアルコールや缶チューハイの開発にも力を入れ、若年層など新たな需要の掘り起こしにつなげた。

鳥井氏は25年3月にHD社長に昇格したばかり。当初は新浪剛史前会長と二人三脚で経営を担う計画だったが、9月に新浪氏がサプリメントの購入を巡り警察の捜査を受け辞任した。26年1月以降の新体制で鳥井氏は事業全般を管掌しながら、米国を中心とする海外事業のマネジメントに一層注力するとみられる。

西田氏はビール事業畑の経験が長い。サントリーでは鳥井氏の直下でビール事業トップとしてサントリー生ビールを手がけた。価格が他社の標準価格帯ビールより10円安く、節約志向の消費者から支持を集めた。直近ではサントリーHDの常務執行役員として、人材戦略の策定などを担った。26年1月以降はHDの専務執行役員も兼務する。

サントリーは30年までに売上高を24年比2割増の1兆円に引き上げる目標を掲げる。なかでもビール類飲料は、ウイスキーや缶チューハイを含む酒類売上高の主力に育成する考えだが、国内のシェアは2割程度にとどまっており、アサヒビールやキリンビールに劣る。

26年10月にビール類の酒税は最後の改正を迎え、ビール、発泡酒、第三のビールの税額は同額になる。これを受けサントリーは主力の第三のビール「金麦」をビールに格上げする方針だ。酒税改正を機に、新たな体制で鳥井氏が掲げてきた「国内ビール類のシェア25%」を達成できるか。西田氏の手腕が試される。

にしだ・えいいちろう 88年(昭63年) 同志社大文卒、サントリー入社。20年サントリービール社長、22年サントリー取締役常務執行役員、24年サントリーHD常務執行役員。京都府出身。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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