
名古屋大学の松尾豊教授らは、薄くて曲がるペロブスカイト太陽電池向けに炭素材料でできた負極電極を開発した。デンソーなどとの共同研究で、筒状の炭素材料「カーボンナノチューブ」を活用した。従来の金や銀といった金属電極に比べて腐食に強く、製造コストの低下にもつながる。発電効率を高めつつ電極の大型化を目指す。
研究成果をまとめた論文は英国王立化学会が発行する「ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリー・A」に掲載された。
ペロブスカイト太陽電池はフィルム状の太陽電池で、一般的な太陽光パネルにはない薄くて曲がる特徴を持つ。原料をフィルムやガラスなどの基板に塗って作る。安く製造できると期待されており、製造コストを抑える研究開発が進められている。
研究チームが開発した負極電極は金属電極の代わりに使える。電気の流れを良くするために、特定の物質を使ってカーボンナノチューブに電子を注入している。1.5センチメートル角ほどの大きさで、発電効率は約8%だった。松尾教授らは過去に太陽電池の正極電極としてカーボンナノチューブを使う技術を開発しているが、これまで負極電極には使えなかった。
松尾教授は「金属電極をカーボンナノチューブ製に置き換えられれば電極のコストを半分程度に抑えられる」とみる。今後2年程度で30センチメートル角まで大型化する目標で、将来は15%以上の発電効率を目指す。
カーボンナノチューブ電極は光の7割超が透過するほど透明度が高い。研究チームはペロブスカイト太陽電池とシリコン型太陽電池を組み合わせた「タンデム型」向けにも電極の開発も進めている。
【関連記事】
- ・ニコン、ペロブスカイト太陽電池などを受託開発 拠点開設
- ・コニカミノルタ、ペロブスカイト太陽電池の耐用30年 保護膜で実現へ
- ・パナソニックHD・YKKAP、ペロブスカイト太陽電池をビルの内窓で実証
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。