自民党内で、所得税がかかり始める「年収の壁」を178万円に引き上げる案が浮上していることが12日判明した。自民は過去2年の物価上昇を反映させ、現行の160万円から168万円としたうえで、178万円の実現を求める国民民主党に配慮。ただ、対象者などを巡って両者の開きは大きく、調整を続ける。
年収の壁を巡っては、自民、国民民主、公明の3党の幹事長が昨年12月、178万円への引き上げを目指すことで合意した。ただ、大幅な税収減が見込まれることから自民と当時与党だった公明は今年2月、160万円への引き上げにとどめ、さらに対象者を低所得層に限定していた。
自民はこのほど、2年分の物価上昇率を反映させて、壁をさらに引き上げる方針を決めた。2026年度税制改正では、24、25年の計6%程度の上昇を反映。年収に応じて異なるが、所得税の基礎控除を原則58万円から62万円に、給与をもらう会社員が対象の「給与所得控除」の課税最低限を原則65万円から69万円にそれぞれ引き上げる。低所得層の場合は、特例加算を踏まえると、168万円となる計算だった。
ただ、自民は12日午後に国民民主と年収の壁を巡って協議。自民は「3党合意に誠意に対応したい」(小野寺五典・税制調査会長)との意向で、低所得層に10万円を上乗せする検討を始めた模様だ。
ただ、国民民主は対象を幅広い所得層に広げるよう求めている。一方、対象を広げれば、さらなる大幅な税収減が避けられず、今後綱引きが激しくなりそうだ。【井口彩、妹尾直道、安部志帆子】
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