日本製鉄は12日、2026~30年度の中長期経営計画を発表した。米国などを中心に今後5年間で約6兆円を投資する。国内の鉄鋼市場は成長の余地が乏しいことから、これまで以上に海外展開を加速し、成長の足がかりとしたい考えだ。
日鉄は6月に米鉄鋼大手USスチールを完全子会社化した。今回の計画には、日鉄が米政府に約束した約110億ドル(約1兆7000億円)の巨額投資も含まれている。新たな製鉄所の建設や老朽化した既存設備の改修を急ぎ、収益力強化を図る。30年度には3000億円程度の利益貢献を見込んでいる。
加えて、鉄鋼需要の伸びが期待されるインドでも製鉄所の建設を計画しているほか、欧州、タイも成長市場に位置づける。6兆円規模の投資のうち、4兆円程度を海外事業に投じる。
現在は国内外で年8000万トンほどの粗鋼生産能力があるが、31年度以降に1億トン以上へ引き上げる。収益性の改善については、在庫評価差などを除いた「実力」ベースの連結事業利益で30年度までに1兆円以上を目指す。21~25年度の平均は7700億円だった。
東京都内で記者会見した今井正社長は「これまでの5年間で収益体質は大きく改善している。徹底したコスト競争力の追求、グループ総合力の最大化で目標を達成したい」としたうえで、「USスチールの買収も実現し、世界ナンバーワンの鉄鋼メーカーに復権するピースは全てそろった」と強調した。
一方、国内については、今回の計画に新たな高炉休止は盛り込まなかった。国内の鉄鋼需要はバブル期をピークに減少が続いており、日鉄は20~25年に計5基の高炉を休止するなど、生産体制の集約・縮小を進めてきた経緯がある。
今井氏は「これまでの5年間、業界に先立って製鉄所を休止してきた。国内拠点の競争力強化は十分実現できたと思っている」と述べた。【成澤隼人】
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