ダテライズでは起業文化を醸成するために家族連れも楽しめる「縁日」を企画した(23日、仙台市)

仙台市でスタートアップの活性化に向けたイベントが相次いで開催された。事業内容を簡潔に説明するピッチコンテストなどを通じ、東北での起業文化の醸成や有望なスタートアップの知名度向上につなげる狙いがある。

仙台市は23日、市内のホテルでスタートアップイベント「DATERISE!」(ダテライズ)を開催した。市内に本社を置く新興企業などのブース展示や東南アジアでの実践プログラムを優勝特典とするピッチコンテストを開いた。

テーマは「SENDAI to Global!」。市が目指すのはスタートアップの積極的な海外進出だ。ダテライズの意義について郡和子市長は「世界の市場に挑み、さらなる挑戦を目指すきっかけにしてもらいたい」と話す。

東日本大震災後、市はスタートアップ支援を強化してきた。東北大学など高等教育機関の研究を出発点とするディープテック(先端技術)を武器に起業数は着実に伸びた。

他方で成長への課題も浮き彫りになってきた。起業家が仙台・東北圏のみで活動しても、人口減少に伴う市場縮小に悩まされる。起業を資金的に支える金融機関も、その目利きの力に未発達な部分がある。

だからこそ仙台市は海外市場や世界への事業展開を見据えた企業の育成に力を入れる。市は同日に「仙台グローバルスタートアップ・ハブ」を開設。事業の立ち上げから海外展開まで包括的に支える体制を構築した。

市内のスタートアップには東南アジアでの事業展開を希望する声が大きい。米欧よりも規制が緩く、挑戦しやすい環境が整っているからだ。そこで市はシンガポールへの事業展開支援を整備している。

市民への周知を通じた起業文化の醸成にも取り組む。ダテライズでは子どもから大人まで楽しめる「縁日」も企画した。スタートアップが出店する体験型ブースが屋台のように並び、家族連れが仙台の新興企業の事業に理解を深めていた。

仙台市内で活動するスタートアップの社長らがピッチコンテストに登壇した(23日、仙台市)

22日には米ベンチャーキャピタルのペガサス・テック・ベンチャーズが主催する「スタートアップワールドカップ」の東北予選が仙台市で開催された。世界中から新興企業を募り優勝者に100万ドルを贈呈するコンテストの日本代表を選ぶ。

ピッチには東京を中心に10社が参加し、次世代触媒を開発する東北大発のAZUL Energy(アジュールエナジー、仙台市)が優勝した。スポンサーの七十七銀行や北日本銀行の頭取らも登壇し、東北経済界がスタートアップ支援に前向きな姿勢であることをアピールする場ともなった。

スタートアップの育成支援を巡っては内閣府が6月に発表した拠点形成戦略(第2期)で、仙台市を中心とした「東北圏」が東京圏や関西圏などと並び8カ所の「グローバル拠点都市」に選定された。

2020年の第1期でも仙台は「推進拠点都市」に選ばれ、期初に掲げた約5年間の目標はほぼ達成した。ただ時価総額10億ドル以上のスタートアップの創出は1社のみで、東北経済に新たな産業基盤を生み出すには至っていない。

第2期では5年間で時価総額100億円以上の新興を10社以上創出する目標を掲げた。目標達成には目利き力の強化や支援態勢の底上げが求められる。様々なイベントが一過性で終わらず起業文化を育む契機になれば、東北経済の風景も変わってくる。

米VCは仙台市で「スタートアップワールドカップ」の東北予選を開催した(22日)

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