大成建設などのグリーンスローモビリティー(15日、千葉県成田市)

千葉県と成田国際空港会社(NAA)などは、空港構内や周辺の道路で搬送機器を自動走行させる実証実験を始めた。15日を皮切りに民間と連携して複数種類の車両を走らせ、走行性や通信環境などを検証する。空港の機能強化で取扱貨物量の増加が見込まれる中、懸念される人手不足に先手を打つ。

実証実験では道路空間を活用して自動で貨物を運ぶ。初日となった15日は2種類の車両が、空港周辺の県道のトンネルを走行。供用中の道路に隣接する場所で自動搬送機器を走らせるのは、自動で物を搬送する「自動物流道路」での実証として国内初という。

大成建設などは低速で小型の電気自動車(EV)「グリーンスローモビリティー(グリスロ)」がトンネル内で自己位置を精緻に把握できるかを検証した。

自動運転では通常、全地球測位システム(GPS)で車両の自己位置を把握するが、閉鎖されたトンネル内はGPSの活用が難しい。

グリスロは反射板を活用して自己位置を把握する

今回の実験ではトンネル内の壁面に塗料を含む反射体を80メートル間隔で設置。反射体は光の反射強度が周囲と異なるため、車両のセンサーがレーザー光を照射してその強度の違いから自己位置を特定できる仕組みだ。周囲の特徴を捉えて位置を推定するシステムだが、トンネル内は景色の単調さが課題だった。反射体の利用で精度向上を狙う。

貨物をけん引する「トーイングトラクター」型の車両も自動でトンネル内を走行した。将来的に航空機から貨物を搬出し、そのまま近隣の物流施設に運び出すことなどを想定する。

トンネル内を自動で走行するトーイングトラクター型の車両

2025年度末にかけて合計5種類の搬送機器を用いた実証実験を予定する。県とNAAなどは国土交通省の「自動物流道路の社会実装に向けた実証実験」に採択されており、大林組と子会社のPLiBOT(プライボット、東京・葛飾)と連携してカート型の搬送機器を使った実験も予定する。

NAAの担当者は「実証の参加者を含めて空港の課題にマッチするものを議論し、実用的な取り組みにつながることを期待している」と話す。

成田空港は29年3月までにB滑走路の延伸とC滑走路の新設を予定する。取扱貨物量は足元と比べて1.5倍ほどの300万トンに増える見通しで、物流の迅速化や効率化の取り組みが急務となっている。

NAAなどが6月に策定した「エアポートシティ」構想でも、ドライバー不足や労働時間規制への対応、カーボンニュートラルの実現を念頭に自動物流道路(オートフローロード)の整備が盛り込まれている。

全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は15日、成田・羽田空港で特定の条件下で運転手が不要となる「レベル4」の自動運転車両を導入するなど、空港に関わる物流は自動化の動きが進む。

参画企業から説明を受ける熊谷俊人知事

同日開かれた実験の開始式典で熊谷俊人千葉県知事は「様々な課題を検証し、成田空港周辺地域を世界に誇る物流のリーディングケースにしていきたい。将来的には成田・羽田間の貨物搬送でも活用していきたい」と期待した。

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