「これからはロケット県」と力を込める和歌山県の宮崎泉知事(12月17日、和歌山市)

和歌山県の宮崎泉知事が6月に就任し、半年が経過した。民間ロケットの打ち上げやパンダ返還後の観光振興、深刻な財政難など直面する課題について聞いた。

――串本町で来年2月、カイロスロケット3号機が発射される。2024年に2度失敗しており、今回が3度目の挑戦だ。

「11月に姉妹県州協定を結ぶ米フロリダ州を訪れ、ケネディ宇宙センターを視察した。広大な用地に最先端の技術。県が進むべき未来を見た。ロケットは世界的に注目される分野。県南部を中心に関連産業の誘致を進め、観光振興も後押しする」

「人材育成や新たな街づくりも必要になるだろう。全国から生徒を集めた工業高校の設立という構想もある。長く『パンダ県』といわれた和歌山だが、今後は『ロケット県』という認識も広めていきたい。そうなると全国的にも面白い地域になるだろう。第一歩として、来年2月の打ち上げはぜひ成功してほしい」

――白浜町のレジャー施設、アドベンチャーワールドのパンダ全4頭が6月、中国に返還された。日中関係は悪化したが、パンダ貸与を求める方針に変更はないか。

「国と国との関係は悪化したが、引き続き貸与を求める方針に変更はない。長い年月で民間が蓄積した飼育と繁殖のノウハウもある。東京のパンダも返還されるし、とにかく和歌山に来てほしいと願っている」

「一方で観光振興にはパンダ以外の取り組みも必要だ。白良浜を中心とした白浜町の魅力を訴えるよい機会で、世界遺産の高野山と熊野古道もぜひ見てほしい。来年はNHKの大河ドラマで『豊臣兄弟』が放映される。ゆかりの地が多いので、こちらも広くPRしていきたい。南紀白浜空港の活用も進める。羽田線を増便し、利用者を現在の20万人から30万に増やす。将来的には滑走路を現在の2000メートルから2500メートルに延伸したい」

――和歌山電鉄と紀州鉄道の地方鉄道2社が経営難に陥っている。

「和歌山電鉄については2028年4月をめどに、経営を上下分離する公設民営に移行する方針が決まった。今後、県と和歌山電鉄、和歌山市、紀の川市の4者で協議する。支援の主体は両市になるが、県も列車の取得などで支援していきたい。紀州鉄道は地元である御坊市の意向が何より大切だ。地元が判断するなら、鉄道を廃止してバスで代替という選択も尊重する」

――2027年度末で財調・県債基金が20億円の赤字に転落する見通し。県財政は危機的状況にある。

「予算編成が困難になるので、赤字転落は絶対に避ける必要がある。これまで以上に事業の見直しを進める。不要な県財産の売却も進める。ただ、必要な予算は削らず、メリハリある編成を心がける。南海トラフ大地震など災害時の備えも欠かせないので、資金的な余裕は常に持っていたい」 

(聞き手は田村広済)

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