
東京大学などの研究チームは新たな結晶材料を自律的に探索し、設計する生成AI(人工知能)を開発した。新材料を推論し、さらに材料の組成から3次元の結晶構造、材料の特性までを予測できる。従来は難しかったAIによる材料探索の過程を研究者が理解しやすくなり、新たな知見の獲得にもつながることが期待される。
無機物の材料開発はエネルギーや半導体など、多くの産業で求められている。近年はAI技術の普及で、情報技術を駆使して材料を探索する手法「マテリアルズ・インフォマティクス」への注目が高まっている。米マイクロソフトは1月、利用者が作りたい材料の性質を入力するとAIが構造を提案する「逆設計」ができるとする研究成果を発表した。
東大の溝口照康教授や同大博士課程の高原泉氏らの研究チームは、AIの基盤技術である大規模言語モデル(LLM)で研究計画を立てて、材料の化学組成などを提案する「MatAgent(マットエージェント)」を開発した。構造の推定や物性の評価を、それぞれ別のAIモデルが担う。AIが生成した材料が、どのような研究プロセスで有望視されたのかなどを研究者が理解しやすくなっているのが特徴だ。
逆設計では、AIが材料を生成した過程がブラックボックスになっていると指摘されており、生成した材料が狙った特性を備えていない場合も多くあるという。MatAgentを使えば、人間が研究成果を解釈しやすくなり、質の高い研究につながる可能性があるという。
今回の研究成果は米科学誌「セル・リポーツ・フィジカル・サイエンス」に掲載された。
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