鈴木憲和農相は19日の閣議後記者会見で、来年の通常国会に提出予定の食糧法改正案にコメの「需要に応じた生産」を生産者の努力義務として課す方針について、「需要に応じない生産」の例を問われ、個別の県の名前を出して解説した。
鈴木氏は努力義務規定のため国に「強制力はない」とするが、今後、産地が需要に応じた生産の意味を解釈する一つの判断基準になる可能性がある。
鈴木氏は仮定の話として来年6月末の民間の在庫量が膨らみ、主食用米が全国的に供給過剰に陥った場合を例示。それにもかかわらず、全国トップの生産量を誇る新潟県が、需要拡大を見込んで増産しようとするケースに言及した。
鈴木氏は「トップの県が(供給過剰なのに)さらに増産をしようとなれば、それは新潟県だけの課題ではなくて、国全体のコメの生産をある種不安定にしていくことにもつながる」と述べ、望ましくないとの認識を示した。
産地や生産者が自らの需要予測に基づき自主的に増産を判断することを制約しかねない発言で、国が「需要に応じた生産」を名目に、法律に基づいてどこまで口先介入するのか基準が不透明な状況となっている。
また鈴木氏は、大手企業などでつくる「国民生活産業・消費者団体連合会」(生団連)が、昨年夏以降に起きたコメ不足と価格高騰の原因について、政府による自己検証には限界があるとして「第三者委員会」による客観的な検証を求める提言を出したことに言及。農水省が人選をしている外部の有識者らでつくる「食糧部会」で意見を聴取しているとして「政府内や農林水産省内のみで検証したとの指摘は当たらない」と反論し、生団連が求める第三者委の設置に否定的な見解を示した。【中津川甫】
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