千葉大学などの研究チームは、ぜんそくや関節リウマチといった慢性炎症の病気に関わる重要なタンパク質を発見した。免疫細胞の一つ「T細胞」が肺や腸など炎症が起きている組織に長期間とどまる仕組みや、炎症を引き起こす生理活性物質「サイトカイン」の産生を制御していたことが分かった。発見したタンパク質を標的とした新しい治療薬開発につながる可能性がある。
研究成果は米科学誌「サイエンス」に掲載された。
T細胞のような免疫細胞は体内に侵入したウイルスなどの異物を排除した後、一部は「記憶T細胞」として体内にとどまる。肺や腸などの組織に長期間とどまる記憶T細胞の一部は、花粉症やぜんそく、関節リウマチなどの慢性炎症に関係していると考えられていたが、どのようなメカニズムで制御されているか分かっていなかった。

千葉大学の木内政宏助教と平原潔教授らの研究チームは、組織にとどまり炎症の原因となる物質を放出する一部の記憶T細胞で、HLFというタンパク質が特異的に発現していることを発見した。HLFは転写因子とよばれるタンパク質の一種で、特定の遺伝子の発現を制御する役割を持つ。
HLFを発現しないよう遺伝子を操作したマウスでは組織に長くとどまっている記憶T細胞の数が著しく減少したほか、炎症反応も抑えられていた。またHLFは記憶T細胞を炎症が起きた臓器などに長く定着させることにも関わっていた。
実際に炎症を起こした患者の病変からもHLFが多く発現する記憶T細胞が確認された。今後はHLFが、長期間組織にとどまる記憶T細胞の一部で発現する原因などの解明に向けた研究を進める。
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