日本経済新聞と朝日新聞が米パープレキシティを提訴した。生成AI(人工知能)による検索サービスが急速に拡大する中、記事の無断利用が著作権侵害に当たるとする訴訟が国内でも広がった。専門家に提訴の受け止めや、今後の議論のあり方について聞いた。
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問題提起に大きな意義、東京大の玉井克哉特任教授(知的財産法)

著作権法は生成AI事業者による「学習」について30条の4で規定しているが、軽微とはいえない「利用」はカバーしていない。最も重要な1次情報の収集に相当なコストをかけている報道機関が1円も得られないのは適切な価値配分ではない。欧州はかつて著作権と別に「データベース権」を作って対処した。同様に「データ保護権・処理権」といった措置を考えてもいい。
一連の訴訟は世界的に顕在化している生成AIの課題について日本からも提起する点で意義が大きい。訴訟相手はパープレキシティだが、今後ビッグテックと向き合う必要性も出てくるだろう。それを念頭に議論を醸成し、ルール形成につなげる必要がある。
生成AI検索の記事利用が「二次的著作物」として著作権侵害に該当する可能性もあり、外国企業による履行の確実性をどう担保するかという視点も欠かせない。
対価支払う契約の促進を、早稲田大の上野達弘教授(著作権法)

生成AI事業者による権利侵害の有無は、出力される文章が「元の記事とどの程度似ているか」が焦点になる。その上で、裁判所が著作権法上の「軽微利用」についてどのような判断を示すか注目される。現在は適用の基準が不透明で、AI事業者はビジネスしづらい。裁判所の判断で許諾が必要となればライセンス契約も進んでいくだろう。
AI事業者はネット上にある雑多なデータよりも、学習に適した形のデータセットを求めている。報道機関と契約すれば継続的な関係を築けて「ウィンウィン」となる。過去記事を含めて学習に適したデジタルデータを一括で提供してもらえるなら年間数十億円を支払うというAI事業者もいる。権利者がデータを提供し、AI事業者が対価を払うという契約を促進していくべきだ。
AI検索はまだ過渡期にある。今回の訴訟もそうした中で起きている事象だと思う。
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