
富士通の時田隆仁社長は24日までに日本経済新聞の取材に応え、日本IBMと電子カルテなど医療データを共有する基盤を共同で開発する方針を明らかにした。両社が手掛ける電子カルテのシステム連携などにより、医療データの利活用を促進する。
富士通と日本IBMは9月、人工知能(AI)やクラウド、ヘルスケアなどの分野で協業する検討を始めた。時田氏は同社との協業の進捗や意義について述べ、「もはや競合といっている場合ではない。情報の共有が進むようなプラットフォーム(基盤)ができれば病院や患者にとってもいいことだ」とした。
国内の医療分野は世界と比べてデジタル化の遅れが深刻になっている。日本政府も官民の医療データの共有に向けた検討を進めている。国内の電子カルテ市場で高いシェアを持つ両社が率先して国の動きにも対応し、データの流通促進や開発の効率化などを図る。
富士通は10月には米エヌビディアとAI半導体の開発などで提携するなど、相次いで提携戦略を進めてきた。時田氏はAI分野での協業について「自社(技術や製品)にこだわりすぎると世の中の優れたものを見逃すことになりかねない。自社の成長にもよくない」と述べ、今後も積極的に協業する姿勢を示した。
国産AIの開発を巡っては官民連携に向け、ソフトバンクなどの日本企業十数社が来春にも新会社を設立する構想がある。政府は5年間で1兆円規模の支援を計画している。新会社への参加について、時田氏は「目的が同じところにあり機会があれば考える」と参加是非を検討する意向を示した。
(張谷京子)
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