小型ドローン開発で最先端を行く企業「Liberaware(リベラウェア)」の閔弘圭(ミン・ホンキュ)代表取締役=東京都港区で2025年11月27日午後0時0分、平塚雄太撮影
写真一覧

 東京電力福島第1原発の原子炉内や埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故の現場など、人が入りにくい場所で無人航空機ドローンが活躍している。その開発で最先端を行く企業が「Liberaware(リベラウェア)」(本社・千葉市中央区)だ。代表取締役の閔弘圭(ミン・ホンキュ)さん(40)は県内の大学で学んで起業した。「技術を通じて安全な社会を目指したい」と語る。【平塚雄太】

 ――開発した小型ドローンが活躍していると聞いています。

 ◆2019年にIBIS(アイビス)、23年に改良機のアイビス2を出しました。アイビス2は縦・横とも20センチ未満で、重さは約243グラムと軽量です。小さいとバッテリーの持ち時間が短くなるのですが、10分以上飛べます。この小ささでこの飛行時間の産業用ドローンは世界でも他にないと思います。

 粉じんなどの影響も受けにくく、ライト付きで暗闇でも活動や撮影ができるため、橋やトンネル、下水道管などのインフラ設備や工場内の点検に活用していただいています。

 社会課題の解決にも貢献しています。24年1月に起きた能登半島地震では、倒壊した家屋内の調査に入りました。24年3月に福島第1原発の原子炉内部を撮影するプロジェクトに成功し、25年1月にあった埼玉県八潮市の道路陥没事故では、下水道管内で(転落した)トラックを発見しました。

 ――なぜ小型の機体を開発したのですか。

下水道内を飛行するドローン・IBIS(アイビス)2=リベラウェア提供
写真一覧

 ◆大きいものを作るとお金がかかるというのもありますが、小型の方が世の中の役に立つと考えました。大学でドローンを研究していた頃、インフラ設備の整備・点検に使えないかという相談がよくあり、設備が老朽化し、働いている人たちが苦労しているのを見てきました。そうした現場に貢献できるドローンを作りたいという思いがありました。

 ――どんな研究をしてきたのですか。

 ◆千葉工業大大学院や千葉大でロボットを研究していました。千葉大研究員の時、ドローン研究の第一人者と言われる野波健蔵先生(現千葉大名誉教授)と会って人生が変わりました。ドローンの可能性を知り、企業などからの要請を受けてドローンの活用を研究する日々が続きました。

 ――そこから起業したのはなぜですか。

 ◆研究ではなかなか実際の製品開発までたどり着きません。もっとドローンの社会実装が進んでほしいと、大学の研究仲間たちと16年に起業しました。

 エンジニアが身銭を集めて作った会社なので、最初は資金調達に苦労しました。18年にファンドから出資を受けて資金のめどがつきましたが、その間もドローンの開発は続け、大手企業から工場点検の相談を受けてドローンの防じん機能や小型のエンジンモーターの開発が進みました。それを生かしてアイビスの発表に至りました。

 ――今後、どのような活動をしていきたいですか。

 ◆各地でインフラの老朽化は進んでおり危機感を持っています。そのためドローンの活用を進め、さらにデジタル技術を組み合わせてより安全を確保できるようにしていきたいと思っています。

 21年にJR東日本と合弁会社を設立し、ドローンで撮影したデータなどをもとにして駅や鉄道施設の3次元データを作り、点検や整備を効率化できるような取り組みを進めています。人手不足になっても次の世代に安全な日本を残せるようにしていきたいと思い、さまざまな仕組み作りに取り組んでいます。

ミン・ホンキュ

 1985年生まれ。父は韓国人技術者。3歳まで日本、その後は韓国で育ち、中学2年で日本に戻る。千葉工業大、千葉大でロボットやドローンを研究した。2016年8月、研究仲間たちと株式会社Liberaware(リベラウェア)を設立。同社は24年7月に東証グロース市場に上場した。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。