スカパーJSATなどが落札した複数の小型衛星を連携させ一体運用する「衛星コンステレーション」事業のイメージ図

スカパーJSAT、三菱電機、三井物産など7社は25日、防衛省向けの衛星網を整備する事業を落札したと発表した。衛星から得られた観測画像の提供から地上施設の運用、事業全体の管理までを一体で担う。スカパーJSATは衛星通信事業者として30基以上の静止衛星の運用で培ったノウハウをもとに、宇宙を含めた安全保障分野での事業基盤を広げる。

事業期間は契約締結日から2031年3月までの約5年間。入札額は非開示としている。スカパーJSAT、三菱電機、三井物産の3社は特別目的会社(SPC)を設立し、複数の小型衛星を連携させ一体運用する「衛星コンステレーション」の整備、運営に取り組む。

プロジェクトには三菱電機が出資し、戦略的提携をするSynspective(シンスペクティブ)や衛星開発のアクセルスペースホールディングス(HD)も参画する。衛星網の構築には、電磁波を使って地表面を観測する「小型合成開口レーダー(SAR)衛星」を開発するシンスペクティブなどが手掛ける国産の衛星を活用する。国内の宇宙スタートアップやディープテック(先端技術)企業の振興にもつなげる。

日本政府が推進する、外敵の射程圏外から対処可能な「スタンド・オフ防衛能力」の向上には衛星画像を安定的に取得できることが不可欠だ。今回の衛星事業では、防衛省が必要な観測画像を優先的に取得する権利を持つことで有事や緊急時に備えられる。現状の商用衛星による画像提供では必要なタイミングで画像を取得できない可能性があった。

宇宙空間は陸海空、サイバー空間に続く安保上の重要領域に位置付けられる。日本政府は宇宙分野における官民連携を広げる方針も打ち出しており、民間が宇宙インフラの担い手となって運用するモデルは今後も拡大が見込まれる。

スカパーJSATは近年、成長戦略に宇宙安保を組み込んでいる。従来は放送、官公庁やインフラ企業向けの通信が収益の柱だったが、足元では航空機内のWi-Fi(ワイファイ)の回線や安全保障の用途へと幅を広げている。特に安保の領域は官需を背景に中長期で安定した収益を見込める点が大きい。

衛星はまず簡易的なシステムで段階的に運用を始め、30年代にかけて本格運用が進む見通しだ。将来的には防衛用途で培った運用実績やインフラを民間企業向けサービスなどに転用するなどデュアルユース(防衛・民間両用)を進めていく考えだ。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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