携帯電話の全契約回線数が1000万件となったのを受けて記者会見する楽天Gの三木谷浩史会長兼社長㊧(25日、東京都新宿区)

楽天グループ傘下の楽天モバイルは25日、他社の回線を借りて割安なサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)などを含む携帯電話の全契約回線数が1000万件に到達したと発表した。目標に掲げていた2025年内の1000万件突破を達成した。今後は地方開拓による回線数の積み増しやARPU(1契約あたりの月間平均収入)の向上が課題となる。

「基地局の設置や新規客の獲得、様々なプランの開発などをしてきてここまでこられた。1つのマイルストーンとして今後も頑張りたい」。同日に東京都内で記者会見した楽天Gの三木谷浩史会長兼社長はこう述べた。

記者会見する楽天Gの三木谷浩史会長兼社長(25日、東京都新宿区)

楽天Gは当初、携帯事業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)黒字化には800万〜1000万件の契約と、2500〜3000円のARPUが必要としていた。しかし、携帯事業が他のサービスに貢献した効果を考慮する「正味ARPU」という指標を導入した際にこの基準を撤回している。

楽天Gは「第四のキャリア」として近年の携帯電話業界に大きな影響を与えてきた。本格参入したのは20年だ。データ通信量が月1GBまで無料の「0円プラン」を投入し、海外よりも料金が高いとされていた日本の携帯電話市場に一石を投じた。

菅義偉元首相が推進した官製値下げもあって、21年には大手3社を巻き込む値下げ競争の時代に突入した。楽天Gは低価格路線で台風の目となったが、基地局インフラの整備などの費用がかさんで業績は厳しい状況が続いた。22年に0円プランの廃止を発表すると契約数が約50万件減少した。

若者と法人の利用が主体に

上向きの契機となったのが23年の「最強プラン」導入だ。KDDIから回線を借りてローミング接続し、データ利用量の上限をなくした。スマートフォンで動画視聴などをする若者の需要をとらえた。

電波がつながりやすい周波数帯の「プラチナバンド」を総務省が割り当てたことで、つながりやすさの改善にもつながった。一般に「三木谷キャンペーン」とも称されている販促活動は話題となり、三木谷氏自らの「どぶ板営業」により法人契約数も増えた。

今後はARPUの引き上げが課題となる。25年7〜9月期に2137円と前年同期から98円の上昇にとどまる。携帯電話事業の損失は縮小しつつあるが、非経常的な項目などを調整・控除した「Non-GAAP営業損益」は25年1〜9月期に1268億円の赤字を計上している。利益を生み出す構造へと転換する必要がある。KDDIからのローミングもなお継続しており、自前の体制構築も道半ばだ。

地方や高齢者を開拓へ

回線契約数の積み増しも求められる。三木谷氏は会見で「多くの方に値段が高くなく、快適なモバイル環境を提供していきたい」と述べた。地方や高齢者層の開拓を進めていくとみられる。

(桜木浩己、山本貴大)

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