
三菱商事は27日、千葉県と秋田県沖の3海域で計画する洋上風力発電所事業から撤退すると発表した。中西勝也社長は「実現可能な事業計画を立てることは困難であるとの結論に至った」と述べ、建設コストの大幅増などを理由に挙げた。
撤退するのは、秋田県の「能代市、三種町及び男鹿市沖」「由利本荘市沖」と千葉県の「銚子市沖」の3海域の事業。三菱商事や中部電力の子会社などで構成する企業連合は2021年、洋上風力を巡る国の公募制度の初回入札で3海域を「総取り」で落札した。
3海域合わせた発電出力は約170万キロワット。出力1キロワット時当たりの売電価格は11・99~16・49円と政府が設定した上限価格29円を大幅に下回る計画を示していた点が評価された。しかし、その後の物価上昇や円安で建設コストが上昇し、実現が厳しくなった。三菱商事は25年3月期に洋上風力事業で524億円の損失を計上している。東京都内で記者会見を開いた中西社長は「入札時に見込んでいた金額より建設費用が2倍以上の水準に膨らんでおり、将来さらにコストが変動するリスクもある」と説明した。
洋上風力は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた「切り札」として期待されてきた。25年2月に改定された国のエネルギー基本計画では、電源構成に占める風力発電の比率を、23年度の1・1%から40年度に4~8%に引き上げる目標を掲げている。
今回の事業撤退で、それぞれの海域では再公募する必要がありそうだが、資材価格や人件費は世界的な高騰が続いており、代わりの事業者が現れるかは不透明だ。政府はエネルギー戦略の見直しを迫られる可能性がある。
【佐久間一輝、鴨田玲奈】
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