記者会見する三菱商事の中西勝也社長 (27日、東京・丸の内)

三菱商事は27日、秋田県などで計画していた洋上風力発電から撤退すると発表した。同日午後に中西勝也社長が東京・丸の内の本社で記者会見し、原因や経緯を説明した。主なやりとりは以下の通り。

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――安値での落札に無理があったのでは。

「応札した2021年当時、見通せる事業環境や金利、インフレなども含めて採算を確保できると判断し売電価格を決めた。経済情勢の激変でコストが2倍以上に膨らんだ」

「電力価格に一定額の補助金を上乗せして支給するFIP制度に転換して落札価格の2倍以上の水準で30年間電気を販売できたとしても、投資を回収できないと判断した。何千億円も投資するのにリターンがマイナスとなる案件では、民間企業ではそのリスクを取れない」

――インフレなどの外部要因にとどまらず、事業計画そのものの甘さが指摘されています。

「採算見通しが悪化した要因のなかで最も大きいのが欧州の風車メーカーの値上げだ。羽根を長くするなど次々と新しいシリーズが出るなか、ロシアによるウクライナ侵略でサプライチェーンが遮断し製造コストが上がった。技術の進展と当社の開発スピードが合っていたのか、察知できなかったのが教訓の一つだ」

――地場の企業は運転開始に備えて投資を進めてきました。

「地元の方の期待を裏切ることになってしまい、大変申し訳ないと思っている。28日以降に千葉県や秋田県に経緯を報告しに行く。撤退という結果に終わったが、地域共生策の継続については引き続き地元と密にコミュニケーションしていきたい。立地や風況は良く、三菱商事グループが撤退してもこの案件がなくなるわけではない」

――社長としての責任をどう捉えていますか。

「結果的にプロジェクトを進めることができなかったのは断腸の思いだ。データの開示など後続の企業にとって生かせることはやらなければいけない。今回は日本のカーボンニュートラルに貢献できなかったが、脱炭素には引き続き挑む。責務を全うして経営を続けていきたい」

――今後も洋上風力の開発自体は続けますか。

「国内については軽々に言えず、よく考えなければならない。欧州での開発経験も生かし、日本のエネルギー自給率の向上につながることがあれば尽力する」

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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