
富士通は27日、米エヌビディアと協業し病院向けの人工知能(AI)システムを開発したと発表した。電子カルテなどの医療データを収集する基幹システム上に、病院業務に特化したAIを動かせるようにした。患者との会話を基に、AIが受付や問診などの業務を代替できるようになる。
開発したのは人の代わりに自律的に作業する「AIエージェント」向けのソフトウエアだ。同ソフトを活用すれば、患者が画面上のAIアバター(分身)と会話することで、来院時の受付や問診を完了できるようになる。
患者がどの診療科で診てもらうべきかの分類もAIが代替する。これまで医師や看護師が担っていた診察前の一連の業務をAIにより自動化する。
年内にも提供を始める。まずは受付といった定型業務向けに展開するが、将来的には心臓のエコー画像の解析など、より高度な業務にも適用していく。富士通が自ら開発するAIだけではなく、病院側の要望に応じて他社のAIも組み込めるようにする。
AIを組み合わせたり、多様な環境で動かしたりするためにエヌビディアの開発基盤を活用する。AIアプリの開発を効率化する基盤で、多くの企業がエヌビディアのものを利用しているとされる。
富士通は自社の基幹システム上でAIエージェントを開発しやすい環境を整えることで、より多くのAIアプリの開発企業と協力しシステム全体の機能向上を狙う。
将来的には、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)利用も見据える。広範な業務でAIを活用することになれば、膨大な演算が必要になりGPUが欠かせない。エヌビディアのGPUを活用しやすいソフトウエア環境を用意する必要があった。
富士通は国内の電子カルテで高いシェアを持つ。エヌビディアは幅広い病院の顧客網を持つ富士通と組むことで、日本の医療業界に特化したAIの実現を目指す。日本法人の井崎武士エンタープライズ事業本部長は「日本の文化的背景に適合させた『ソブリン(主権)AI』モデルが必要だ」とし、国や地域、業界別に特化したAIモデルの重要性を訴えた。
富士通の大塚尚子執行役員常務は「AIとデータで医療業務の運営を簡素化することで医療従事者の負荷を減らす」と話した。
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