「蛍光ペン」と呼ばれることも多いラインマーカーに新風が巻き起こっている。落ち着いた「淡い色」の人気が世界で急上昇中だ。ブームの仕掛け人は筆記具メーカー「ゼブラ」。だが、ヒットに向けては苦労の連続だったという。過去に何度も廃盤に追い込まれたほどに日の目を見なかった「淡い色」に一体、何があったのか。
「淡い色」人気を決定づけたのは、ゼブラが2009年1月に発売した「マイルドライナー」(税込み110円)。世界20カ国以上で販売し、24年度時点で累計販売数は4億本を超えた。直近では売り上げの7割を海外が占めている。ゼブラのサインペン「マッキー」、ボールペン「サラサ」に次ぐ主力商品だ。
ゼブラが初めて「淡い色」のラインマーカーを発売したのは1998年。当時のラインマーカーは大半が蛍光色。ノートをまとめる際などに、文字を強調するために使われることが多かった。でも、一部の消費者からは「色が強すぎる」「目にうるさい」という声も出ていた。これに応えた商品だった。
だが、売れ行きはさっぱり。わずか2年で「淡い色」は廃盤に追い込まれた。03年、06年にも再び「淡い色」のペンを出したもののいずれも振るわず、定番化には至らなかった。マイルドライナーは過去3度の廃盤を乗り越えた「4度目の正直」と言える。
ヒットの要因は
ヒットの要因は何か。インクの色味などは過去の商品と同じだという。逆に大きく変えたものがある。ペン自体のデザインだ。
ペンの軸を当時は比較的珍しかった白色に統一し、商品名を小さく、おしゃれな字で表記した。事務用品というイメージがあった従来の雰囲気を一新し「女性に振り切ったデザイン」にした。
狙いは的中した。かわいらしいデザインが目を引き、目に優しい色合いが女性を中心に受け入れられた。過去の失敗のイメージから「目立たないラインマーカーなんて意味がない」と反発していた取引先の声も次第に小さくなった。
「廃盤になっても、消費者のニーズに応えようと新たな商品を送り出し続けた開発者の熱意が、ヒットにつながった」。ゼブラの広報担当者はこう語る。
幸運も重なった。16年ごろから手書きで彩った手帳を交流サイト(SNS)に投稿することが流行した。「淡い色」は、複数の色を使ってもうるさい印象にならず「映える」と注目された。マイルドライナーで線を引いたり、イラストを描いたりと自分らしく楽しむ様子が盛んに発信された。
海外でも「淡い色」の活用法がSNSを中心に広がっていった。米国で人気の手帳術「バレットジャーナル」や、韓国の学習用手帳「スタディープランナー」でもマイルドライナーが紹介され、国外でも人気に火が付いた。
マイルドライナーは全40色。例えば、人気色のグレー系だけで微妙に色が異なる3種類を用意した。インスタグラムでは、マイルドライナーのハッシュタグを付けた投稿が国内外から37万件超寄せられ、日々、新しい使い方が発信されていく。デジタル社会がアナログのマイルドライナーの人気を支えている形だ。広報担当者は「今後も手書きを楽しめるような商品を出していきたい」としている。【嶋田夕子】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。