ダイハツの新型軽商用車「e-ハイゼット カーゴ」(2日午前、東京都文京区)

ダイハツ工業は2日、電気自動車(EV)の軽商用バン「e-ハイゼットカーゴ」と「e-アトレー」を発売した。2023年度に投入する計画だったが、認証不正問題の発覚で開発が遅れた。軽商用EVでは三菱自動車や日産自動車などが先行しているが、業界最長の航続距離を武器に最後発からの巻き返しを狙う。

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「お客様にはお待たせして申し訳なかったが、やっとお披露目ができた」。同日、都内で開催した新型車の発表会でダイハツの井上雅宏社長は語った。軽商用EVを初めて公開したのは2023年5月。主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせて広島市内で開催されたイベントでプロトタイプを展示し、23年度中の市場投入を目指していた。

軽商用EVを巡っては、業界の先駆けとなる三菱自の「ミニキャブEV」が発売されたのが23年12月だった。24年2月には日産の「クリッパーEV」が続き、ホンダも24年10月に「N-VAN e:」を発売した。本来であれば先陣を切っていたかもしれないダイハツは、車両の安全性を確認する認証試験の不正問題によって最後発を余儀なくされた。

ダイハツの軽商用EVの最大の特徴は航続距離だ。先発組ではホンダの245キロメートルが最長だったが、トヨタ自動車とスズキと共同開発したEVシステムによって257キロメートルにまで伸ばした。部品の配置を見直したり、サスペンションを新たに設計したりすることで、室内スペースを変えることなく大容量バッテリーの搭載を実現した。

一方、価格は最安タイプで314万6000円と既存の軽商用EVの中では最も高い。航続距離を長くするため電池を多く積み、オプションになることが多い急速充電口を標準装備にしたことで価格は高くなった。

ハイゼットカーゴとアトレーともに航続距離は同じだ。アトレーは両側にパワースライドドアを設けるなどハイゼットカーゴの上位モデルとの位置づけで、個人事業主に運送だけでなくプライベートでも使ってもらえる仕様にした。両車ともダイハツ九州大分第1工場(大分県中津市)で生産し、月間の販売目標は計300台に設定した。

軽商用車はダイハツが強みとする分野だ。全国軽自動車協会連合会によると、25年のハイゼットカーゴとアトレーの新車販売台数は前年比26%増の8万2520台だった。軽商用車(キャブオーバーバン)では首位を維持し、三菱自(6418台)や日産(2万1940台)を突き放す。

井上社長は「脱炭素に貢献したいという顧客から、EVは出せないのかという要望を多くもらっていた。ダイハツの販売の半分は商用車であり、この領域でEVを出すのが最良と考えた」と語った。

新型軽商用EVについて説明するダイハツの井上雅宏社長(2日午前、東京都文京区)

今後は軽乗用EVの開発が課題となる。ダイハツは軽乗用EVのラインアップが1台もない。他社は日産の「サクラ」をはじめ多くの車種を持つ。スズキは26年度に軽EVの生産を始め、中国のEV大手・比亜迪(BYD)は今夏に軽EV「ラッコ」を日本市場に投入する予定だ。

ダイハツの井上社長は軽乗用EVについて「独自のEVシステムの開発も進めている。まだいつというのは言えないが、事業環境なども勘案したうえで投入を検討していきたい」と述べた。

ダイハツは2030年に全ての新車販売をハイブリッド車(HV)を含む電動車にする目標を見直す方針だ。新たな時期については「バチッと決められるわけではない。HVなどを含めたマルチパスウェイ(全方位戦略)の方針は堅持しつつ、適宜修正しながら進める」(井上社長)とした。

軽EV市場での競争が激しさを増す中、ダイハツにとって軽商用EVの投入はひとつの過程に過ぎない。競争を勝ち抜くために残された時間はそう多くはない。

(三隅勇気、田村匠)

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