
フジテレビの第三者委員会が元タレントの中居正広氏によるフジのアナウンサーだった女性への性暴力を3月末に認定した問題で、フジは28日、港浩一前社長と大多亮元専務に対し、計50億円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴したと発表した。この問題に関連し、6月末までに約453億円の損害を被っており、50億円はその一部と説明した。
中居氏の問題は2023年6月に発生。フジによると、報告を受けた港、大多両氏は、重大な人権侵害の可能性がある事案だったのに、事実関係の調査をした上で、専門的な助言を受けて原因を分析したり、対策チームを設置したりといった会社法上の善管注意義務を怠り、その結果フジに損害を与えたとした。

一連の問題は昨年12月の週刊誌報道で表面化し、今年1月の記者会見の失敗を機に、大量のCMスポンサー離れが起きた。フジは今後、損害が拡大した場合などには、50億円の請求額をさらに増やす可能性があるとしている。
フジの第三者委は3月末に発表した報告書で、中居氏によって元アナウンサー女性が23年6月に「業務の延長線上の性暴力」を受けたと認定。当時の港社長や大多専務は8月に編成制作局長から報告を受けたが、「プライベートな男女間のトラブル」と即断したと記した。被害女性に寄り添わない対応を繰り返し、経営リスクとも捉えなかったことについて、第三者委は「経営判断の体をなしていない」と批判。「ハラスメントに寛容な企業体質」とも指摘した。フジは今年6月、両氏の法的責任を追及し、提訴する方針を発表していた。
この問題を巡って、港氏は1月に引責辞任し、昨年に関西テレビ社長に転出していた大多氏も今年4月に辞任した。再発防止に向け、フジは「人権ファースト」を掲げ、アナウンス室を編成局から独立させるなどの組織再編を行い、ガバナンス(企業統治)改革などに取り組んでいる。
提訴を受け、あるフジ社員は「両氏を提訴することで、会社として過去と決別する姿勢を示したのだろう」と語った。その上で「社長時代に港氏は(一連の最初の会見となった)1月17日の失敗会見で不十分な説明を繰り返し、テレビカメラを排除した『クローズドな会見』を行ったことなどで、大量のCM差し止めを招いた。大多氏は問題発生時に編成部門のトップだったのに、(問題把握後に)中居氏のレギュラー番組を継続させた。会社はそうした点を重く捉えたのだと思う」と指摘した。【井上知大、諸隈美紗稀】
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