「日ごろの困り事を起点にしたみんなの取り組みが評価された」と語る東北日東工器の小倉孝喜さん=福島市大笹生の同社で2026年2月13日午後2時46分、錦織祐一撮影

 福島市は今年度、事業者や市民、学生らがデジタル技術を活用して地域活性化を目指すアイデアを表彰する「ふくしまデジタルイノベーションアワード」を初開催した。19件の応募があり、初代の大賞には機械工具メーカー「東北日東工器」(同市大笹生)が選ばれた。工場移転の過渡期を逆手に取ってDX(デジタルトランスフォーメーション)で大幅な効率化を実現させ、高く評価された。

 同社は、日東工器(東京都)のグループ会社だったメドテック(山形市)と白河日東工器(白河市)が2024年に合併して社名変更した。建築家の隈研吾さんがファサードのデザインを手掛けた「おおざそう工場」が東北中央道福島大笹生インターチェンジ近くに25年7月に完成し、生産拠点を集約した。

隈研吾さんがファサードのデザインを手掛けた東北日東工器の新工場=同社提供

 これに伴い、白河の製品在庫を新工場近くの仮倉庫に移管し、一時的に出荷業務を行う必要が生じた。テニスコート9面分の平置き倉庫で700品目、11万点の製品在庫を紙と表計算ソフトで管理しようとしたが、位置情報や先入れ先出しが分かりづらく、1日200件の出荷作業はとてもこなせなかった。

 そこで、同社製造技術課主任の小倉孝喜(こうき)さん(36)が、生成人工知能(AI)も駆使して4日間で最低限の機能を備えたアプリを開発。さらに現場の従業員の意見を踏まえて改良を重ねた「StockPilot」の本格運用に12日間でこぎ着けた。

 製品在庫の品目や点数、保管場所を自動で一元管理し、タブレット端末で出荷票を読み取ると、出荷する製品をAIが製造日順にリストアップし、地図上にピンポイントで光らせて示す。出荷作業は1件当たり18分から7分20秒に効率化され6割削減。年間では2200時間となり従業員1人の年間労働時間に匹敵する。在庫管理ミスもほぼ根絶した。

 小倉さんらは日ごろから「現場の困り事を起点に小さな改善を重ね、荷物到着通知アプリなど業務に必要なツールを内製して活用している」という。初代大賞に「現場のみんなの取り組みがこういう形で認められてありがたい。市全体に広がれば」と話していた。【錦織祐一】

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