
米音楽データ会社ルミネイトは音楽関連企業が中心だった顧客層を広げる。アーティストや楽曲ごとの収益性を可視化し、投資会社や消費財メーカーに活用を促す。エグゼクティブ・バイス・プレジデントのスコット・ライアン氏は「ストリーミングの普及でヒットが予測しやすくなり、投資対象として音楽の魅力が高まっている」と話す。
――どのようなデータを提供していますか。
「SpotifyやApple Musicなど世界500以上の音楽配信サービスと契約し、毎日10万曲のデータを追加している。1000社超の顧客がおり、大部分はレコード会社やアーティストのマネジメント会社などエンターテインメント関連企業だ。音楽チャートのビルボードにもデータが使われている」
――最近の傾向は。
「2つの新たなニーズが生まれている。1つは消費者向けブランドによる活用だ。ある飲料メーカーから、Z世代に響く音楽を使ったキャンペーンをしたいと依頼があった。昔は最高経営責任者(CEO)の娘が好きだからといった理由でアーティストを選んでいたが、データを使えば有効なアーティストが誰なのか説得力をもって示せる」
「60カ国以上で、どの曲がよく聴かれているのか分析できる。ジャンルやアーティストによって異なるが、音楽の広がり方には一定のパターンがあり、ある程度の予測が可能だ。ブランドは費用対効果の高いアーティストを選べる」
「もう一つが金融分野だ。銀行やヘッジファンドが音楽の知的財産(IP)に関心を示すことが増えた。かつてはCDを1枚10〜20ドル(約1500〜3000円)で売って終わりだったが、いまは音楽消費の大部分をストリーミングが占める。1回の再生で得られる金額は少ないが、継続的に収益を生み出すのが利点だ」

――なぜ投資対象として関心が高まっているのですか。
「金融関係のクライアントからよく聞くのは、音楽消費が経済動向に左右されにくいという点だ。動画配信サービスと比べて解約率が低く、収益が安定している。音楽はランニング中や運転中など、何かをしながら聴ける。また、同じ映画は多くても数回しか見ないが、音楽はお気に入りの曲を何百回も聴く人がいる。経済が厳しい時でもサブスクリプションを続ける傾向がある」
――今後のサービス展開は。
「4月に(人気ゲーム、フォートナイトを手がける)米エピックゲームズと提携した。ゲームの中で音楽を聴く消費者は増えており、新しい音楽消費の形として拡大していくだろう。今までは音楽に特化してきたが、今後はゲームやTVなどより広いエンタメ消費に対応していく。多様なチャネルやプラットフォームを横断し、コンテンツ消費に関する分析の幅を広げていきたい」
(聞き手は川井洋平)
Scott Ryan カリフォルニア州立大学チコ校を卒業後、SpotifyやGracenoteなど音楽関連企業を経て2020年から現職。鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。