トレーニングマシンを使用する従業員ら=JUKO提供

 筋トレ好きが日本一働きやすい警備会社――。

 京都府内の警備会社がこんなうたい文句で従業員の募集を始めている。社内の倉庫を改修しトレーニングマシンを置き、さらに、提携した近隣のジムからプロのインストラクターを定期的に呼ぶ。無料で体を鍛えつつ、働ける、ということだ。人材確保にとどまらない、いくつかの狙いがあるという。

 この取り組みを始めたのは、精華町の警備会社「JUKO」。2012年創業で、主に京都、大阪、奈良の3府県の施設や交通整理などに警備員を派遣している。

 厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、警備員を含む「保安職業従事者」の2025年12月の有効求人倍率は「6・92倍」。極めて深刻な人手不足の現状がある。JUKOでは現在の従業員は社員、アルバイトを含めて87人いるが、創業者で現顧問の奥野弘佳さん(56)は「需要が多く人を確保できず、受注できないこともよくある」と明かす。

 働き手の高齢化問題もある。同社の平均年齢は50代だが、大学生のアルバイトが引き下げており、大半は70歳前後という。体を壊して働けなくなる人もいるという。

 そこで思い立ったのがこの取り組みだ。介護・福祉の現場で、プロテイン代など「マッチョ」を支援する取り組みがあるのをニュースなどで聞いたことがあり、「体が資本の警備業界に適しているのでは」と考えた。

倉庫内のトレーニングマシンを指さす奥野弘佳さん=京都府精華町内で2026年2月18日午前11時54分、大東祐紀撮影

 2025年12月、倉庫を改修し、150万円ほどかけて本格的なトレーニングマシン1台を導入。1~10キロのダンベルもそろえた。

 募集要項には、新たに「ボディビルダー枠」をつくり、大会などへの出場を目指す人材を募り始めた。倉庫内のマシンは使い放題で、勤務日数に応じたプロテイン・サプリの購入や、大会出場費の補助などをするという。また、近隣のジム「ディグラ」と提携し、プロのインストラクターを定期的に呼んで指導を受けられるようにした。

 既存の従業員ももちろんマシンは使うことができ、健康を維持してもらうことで、より長く働いてもらう狙いもある。また、「顧客にとっても、マッチョが警備する方が安心でしょう」と奥野さん。若者を呼び込み、従業員の健康を維持し、顧客も安心。そして、奥野さんは精華町議も務めており、若者の定住促進で地域活性化につなげたいとの思いもある。まさに、「一石何鳥」にもなる取り組みだ。

 積極的に宣伝も始めた。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」のアカウントを作り、奥野さんがトレーニングマシンを使いながら、人材募集を呼びかけている。

 「警備業界のイメージを変え、業界を活性化させたい」。かつては日本拳法やボクシングをしていたといい、「久しぶりに私も鍛えてみようか、考え中です」と奥野さん。倉庫内の真新しいマシンには、壮大な可能性がある。【大東祐紀】

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